海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年1月24日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

民主党内の戦い

 民主党下院議員で構成された7人の弾劾管理人には、3人の女性、2人のアフリカ系及び1人のヒスパニック系議員が含まれており、文化的多様性に富んでいます。同党の思惑は、米国社会に類似したチームを作り、有権者にアピールすることです。この点は看過できません。

 ちなみに、米メディアによれば、1999年のクリントン弾劾裁判では、13人の弾劾管理人はすべて白人男性でした。

 選挙への影響をもう1点挙げるとすれば、バイデン前副大統領と民主党候補指名争いを戦っているバーニー・サンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)、エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党・東部マサチューセッツ州)及びエイミー・クロブシャー(民主党・中西部ミネソタ州)が弾劾裁判のために、ワシントンに釘付けになり選挙運動ができないことです。

 その結果、バイデン前副大統領に指名争いを有利に戦えるというメリットが生じました。バイデン氏を応援している中道穏健派の民主党議員は、極左のサンダース・ウォーレン両上院議員が選挙運動ができず、弾劾裁判に時間を費やすのを歓迎しているでしょう。加えて、バイデン氏と同じ中道穏健派のクロブシャー上院議員がワシントンに残るのも、同氏のアドバンテージになっています。

ダボスからのメッセージ

 トランプ大統領はダボス会議で、約30分間の演説を行い、米国経済の好調さ強調しました。冒頭、中国との貿易交渉における「第一段階の合意」及び「米国・メキシコ・カナダ協定(新NAFTA)合意」に言及し、続いて700万人の新規雇用並びに3.5%の低失業率をアピールしました。

 トランプ大統領の意図は、「経済でここまで成果を上げた大統領を民主党は弾劾裁判にかけるのか」というメッセージをダボスから米国民に発信して、弾劾管理人に対して正反対の陳述を行うことでした。 

 さらに、他国のリーダーたちと握手をする姿をメディアに撮らせ、自分が「世界の指導者」であるというメッセージも同時に送っています。民主党は世界の指導者を弾劾して排除しようとしているとでも、言いたいのでしょう。トランプ氏はダボス会議を弾劾裁判の対策に利用したといえます。

 記者会見でトランプ大統領は、ボルトン元大統領補佐官の証人召喚について、「国家安全保障上の問題になる」と、否定的な立場をとりました。そのうえで、「彼(ボルトン氏)は私が首脳についてどう考えているのか、ある程度分かっている。特定の首脳について私の考えを明かしたらどうなるのか」と懸念を示しました。

 トランプ大統領のこの見解は理解できますが、同盟国ウクライナへの軍事支援保留は国家安全保障上の問題になったことは間違いありません。トランプ氏がボルトン氏の証言なしで無罪判決を勝ち取っても、有権者は納得がいかないでしょう。

  
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