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2020年2月8日

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和田大樹 (わだ・だいじゅ)

オオコシセキュリティコンサルタンツ アドバイザー/清和大学講師

日本安全保障戦略研究所(SSRI)研究員、日本安全保障・危機管理学会主任研究員などを兼務。専門分野は国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論。日本安全保障・危機管理学会奨励賞を受賞(2014年5月)、著書に「テロ、誘拐、脅迫 海外リスクの実態と対策」(同文館2015年7月)、「技術が変える戦争と平和」(芙蓉書房2018年9月)など。研究プロフィールはこちら

(aruba200/gettyimages)

 もう1つの外国人戦闘員ーー。

 外国人戦闘員、世界的なテロ情報をウォッチングする中でこの言葉を聞かない時はない。シリア内戦やイスラム国(IS)の出現によって、世界各国からシリア・イラクに集結する戦闘員の動向がクローズアップされるようになったが、今日までに戦闘員の国籍や目的、帰還戦闘員の行方などについてさまざまな統計や見解が示された。

 例えば、キングズカレッジロンドンのテロ研究機関ICSRは、2013年12月(ISが宣言される2014年6月以前)、少なくとも世界74カ国から最大1万1000人が戦闘員としてシリアに流入し、その多くは中東・北アフリカ出身者で占められるものの、西欧出身者も最大1900人に上るとの数字を公表した。

 米国の情報調査会社Soufan Groupも2015年12月、シリア・イラクに戦闘員として少なくとも世界86カ国から2万7000~3万1000人が流入し、多い順にチュニジアが6000人、サウジアラビアが2500人、ロシアが2400人、トルコが2100人、ヨルダンが2000人と続く中、欧州からもフランスや英国、ドイツやベルギーなどからおよそ5000人が参加しているとした。

 また、帰還戦闘員について、Soufan Groupは2017年10月、少なくとも5600人が既にそれぞれの国へ帰還し、33カ国が同戦闘員の帰還を確認しているとする報告書を発表した。

 この流入した外国人戦闘員については、上記2つ以外にも多くの統計が発表されているが、月日が経てば経つほど参加国数と参加人数が多くなる傾向があり、結果として100カ国前後から2万~4万人というあたりで落ち着いている。

 外国人戦闘員というと、「強く戦闘意識を持った男たちがISに参加している」というイメージが先行しているが、シリアやイラクへ渡る全員がISに流れているわけではなく、アルカイダ系組織や他の反政府勢力に参加する者も少なくない。そして、そういった戦闘員の中には、妻や子供と一緒に家族で渡った者も多く、動機や目的も多岐に渡る。

 暴力的な過激思想に目覚め、戦闘に参加する高いモチベーションを持って参加した者、スリル感や冒険心を求めて参加した者、救済やボランティア精神でやってきた者、高い報酬に魅了されてやってきた者など多岐に渡り、IS参加者の中には、「IS内部では腐敗が進み、肌の色で差別されトイレ掃除を強制された、何もイスラム教的ではない」、「外国人に特権が与えられて差別的だ」、「優雅な生活が待っていると約束されたのに、実際参加すると正反対の世界だった」、「同じスンニ派のイスラム教徒を殺害するなどISの残虐性に幻滅した」などの理由で離反した者も確認されている。

 今日、シリアで多くのIS戦闘員の妻や子供がキャンプで避難生活を送り、戦闘員の夫を亡くした妻や子供の帰還が各国で治安上の大きな問題になっている。しかし、こういった現実が明らかになってくると、ISという問題は中東政治、国際安全保障を巡るイシューであるだけでなく、女性や子供の処遇を含んだ人権問題であることを国際社会はもっと強く認識する必要がある。

 また、これまでの国際政治やメディア報道もあり、日本の中でも「テロ」、「過激派」というと、それを「イスラム」と無意識に結び付けることが多いのではないだろうか。当たり前だが、テロも過激派もイスラムに限った話ではなく、それぞれの言葉にイスラム的な意味など全くない。要は、イスラムの過激主義化みたいな風潮が9.11以降漂ってきたが、実態は過激主義のイスラム化である。

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