2024年12月23日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年2月10日

 今回のテーマは、「トランプの祝勝会と2回目の弾劾?」です。ドナルド・トランプ米大統領は6日、ホワイトハウスに弾劾裁判で無罪評決に貢献した弁護団及び共和党議員などを招待し、「祝勝会」を開きました。本来でしたら、弾劾裁判が終了したので、大統領は米国民に向かって「国家の団結」に訴えるべきところです。

 ところが、トランプ大統領は米国社会の分断をさらに固定化する言動に出ました。そこで本稿では、祝勝会でのトランプ氏の演出及び発言などを取り上げて分析します。

ワシントンポスト紙を掲げて勝利宣言を行うトランプ大統領(AP/AFLO)

なぜワシントン・ポストなのか?

 トランプ大統領は弾劾裁判で無罪評決が出ると、即座に自身のツイッターに「自分は永遠に大統領だ」という映像を投稿しました。もちろん、合衆国憲法により米大統領の任期は最長で2期8年になっています。

 次に、トランプ大統領はホワイトハウスで無罪評決を祝いました。その際、元プロデューサーのトランプ氏は米ワシントン・ポスト紙を掲げ、「トランプ無罪」の大見出しを見せてアピールしました。上下両院合同本会議で4日に開催された一般教書演説と同様、メディア受けを狙った演出をしました。

 トランプ氏の応援団とみられている米ウォール・ストリート・ジャーナル紙及びニューヨーク・ポスト紙ではなく、同氏がフェイク(偽)ニュースとレッテルを貼っているワシントン・ポスト紙を使用したのです。ここにはトランプ氏の思惑があります。

 ワシントン・ポスト紙はウクライナ疑惑に関してトランプ大統領に不利な記事を書いてきました。その「ワシントン・ポスト紙が敗北を認めた」というメッセージを発信したかったのでしょう。トランプ氏は、勝者(同氏)と敗者(ワシントン・ポスト紙)を明確に分けました。

「いかさま裁判」

 トランプ大統領は祝勝会で、弾劾裁判において検察官役を務めた弾劾管理人(民主党下院議員)と戦ったホワイトハウス弁護団に、「いい仕事をした」とねぎらいの言葉をかけました。

 ただ、今回の弾劾裁判では証人による証言及び関連文書の提出がないまま、「権力乱用」と「議会妨害」の弾劾条項2項目の採決が行われました。その結果、裁判ですべての真実が語られていないという印象を米国民に与えました。

 ホワイトハウス弁護団を率いたパット・シポローネ法律顧問は、弾劾裁判で証人の必要性を強く否定しました。しかし米メディアは、ジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の出版予定の回想録の中に、ある重要な情報が含まれていると報じています。

 ホワイトハウス執務室で昨年5月初旬に行われた会議において、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がジョー・バイデン前副大統領と息子のハンター氏に関する調査をするようにボルトン元補佐官に、トランプ大統領が協力を求めたと記されているというのです。

 驚いたことに、その会議にシポローネ法律顧問が参加していました。ということは、シポローネ氏こそ、弾劾裁判で宣誓証言するべき人物だったのです。これでは「いかさま裁判」と非難されても当然です。

 ちなみに、バイデン氏は5月18日に東部ペンシルべニア州フィラデルフィアで出馬宣言をしました。トランプ大統領がボルトン氏にバイデン親子の調査協力を求めた時期と重なっている点にも注目です。

 従って、疑惑はまったく晴れておらず、ボルトン氏の回想録の出版後に、民主党下院とホワイトハウスの間で「第2ラウンド」が始まる公算が高いといえます。


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