「ティーパーティー」と「トランプ党」の類似点
米下院本会議で昨年12月18日、トランプ大統領の弾劾条項2項目が賛成多数で可決されました。その際、賛成に回った共和党下院議員は皆無でした。一方、1月5日の上院での弾劾裁判における採決では、共和党からの造反者はミット・ロムニー氏(西部ユタ州)のみでした。
トランプ大統領は早速、自身のツイッターに「ずるくて、口のうまいこそこそしたロムニー」という映像を投稿して、人格攻撃に出ました。
モルモン教徒のロムニー上院議員は、「トランプ有罪」に投じた理由に、信仰心を挙げました。ウクライナ疑惑に関するトランプ氏の言動は、「米国民の信頼を損ねたと判断した」とモラルに訴えました。
ただ、ロムニー上院議員が有罪に投じた理由は、本当にそれだけでしょうか。
ロムニー氏は、トランプ大統領に反旗を翻しても、次の選挙で落選する可能性が低いというのも理由です。周知の通り、ユタ州ではモルモン教徒が多数派だからです。あるいは、ロムニー氏は再選を狙わないかもしれません。
これに対して、他の共和党議員は同党における支持率が84%(ロイター通信/イプソス共同世論調査)もあるトランプ大統領に挑戦すれば、再選に不利になると計算しているのでしょう。
熱狂的なトランプ支持者は、10年米中間選挙で旋風を引き起こした保守系の市民運動「ティーパーティー」の支持者と重なるところがあります。当時、共和党議員は、ティーパーティーの支持者の標的になるのを恐れていました。
というのは、彼らには現職議員を打ち落とす力があったからです。そこで12年米大統領選挙において、共和党候補であったロムニー氏はティーパーティーの支持者の声に耳を傾けて、彼らにかなり配慮していました。
トランプ大統領に逆らった共和党議員は、同大統領からツイッターで集中砲火を浴びることは明白です。選挙区のトランプ信者からも報復を受け、再選が危うくなります。
10年中間選挙で共和党は、ティーパーティーに乗っ取られました。今回の弾劾裁判における共和党議員の投票行動をみると、トランプ政権発足3年後で、共和党はほぼ完璧に「トランプ党」になったことが分かります。