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2020年1月27日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「弾劾裁判で暴かれるトランプの不正行為」です。トランプ弾劾裁判で検察官役を務める「弾劾管理人」の3日間にわたる冒頭陳述が24日、終了しました。筆者は弾劾裁判のライブ中継を未明に起きて朝まで見ました。そこで本稿では、特に注目に値する弾劾管理人の陳述に焦点を当てます。

(gguy44/gettyimages)

本当の動機

 弾劾管理人の1人シルビア・ガルシア下院議員(民主党・南部テキサス州第29選挙区選出)は冒頭陳述で、トランプ大統領がウクライナ政府に圧力をかけた動機は、ある世論調査にあったと主張しました。ガルシア議員は保守系の米FOXニュースの世論調査に注目します。

 同議員によれば、トランプ大統領は2017年及び18年はウクライナを支援していました。ところが、19年に入るとトランプ氏の同国に対する態度が急変します。一体何がそうさせたのでしょうか。

 米FOX ニュースの20年米大統領選挙に関する19年3月17日から12月12日までの世論調査の結果をみると、民主党指名争いを戦っているジョー・バイデン前副大統領とトランプ大統領の一騎打ちになった場合、同前副大統領が7ポイントから12ポイントもリードしています。トランプ大統領は自分の応援団であるはずのFOXニュースが、自分に否定的な世論調査結果を発表したことに驚きました。

 ガルシア下院議員は、一貫して高い支持率を維持しているバイデン前副大統領に対してトランプ氏が脅威を抱き、それが動機になって同前副大統領の不利な情報を探そうとしたと結論づけました。ガルシア議員の説明には一定の説得力がありました。

息子ハンター氏の擁護

 続いて、ガルシア下院議員はウクライナのエネルギー会社ブリスマから高額の報酬を得ていたバイデン前副大統領の息子ハンター氏を擁護しました。バイデン氏がウクライナの検事総長を解任するように同国に圧力をかけたというトランプ大統領の議論に、真っ向から反論しました。ガルシア氏の議論はこうです。

 解任された検事総長は、ハンター氏とブリスマとの関係について、実際は調査を行っていなかったというのです。従って検事総長解任は、逆にハンター氏とブリスマに対する調査の可能性を高めたと主張しました。

 加えて、ガルシア下院議員は検事総長解任は、米国の公式な政策と一致しており、同盟国からも支持を得ていたと述べました。

 弾劾管理人の下院司法委員会ジェロルド・ナドラー委員長(民主党・東部ニューヨーク州第17選挙区選出)もハンター氏擁護に回りました。ナドラー委員長はバイデン前副大統領は息子を守るために、ウクライナ政府に対して圧力をかけて、検事総長を解任したのでないと、語気を強めて語りました。検事総長本人が腐敗していたからだと、解任理由を明確にしました。

 民主党はトランプ大統領と共和党が「権力乱用」及び「議会妨害」の2つの弾劾条項から、米国民の目をそらす目的でハンター氏を利用しているとみています。テッド・クルーズ上院議員(共和党・南部テキサス州)は証人召喚について、ハンター氏とジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の取引を提案しましたが、民主党はそれに応じていません。

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