一方、北京も、おきまりの「圧力コメント」を発し、ラビア総裁、ドルクン事務総長批判こそ展開したものの、それ以上の手は打ってきていない。現在は、国内でのゴタゴタが多くそれどころでない、との見方もできるが、わずか数年前に、ラビア総裁の訪日にあたって、日本の与野党の政治家が彼女と接触しないよう、執拗に工作を行なったことを思えば、一体どうしたのか、と思うほどあっさりした反応である。これも、今回の日本開催の背後に米国の意向を見て取っているがゆえの「冷静さ」か、と考えずにいられない。
昨今の中国国内の権力闘争の顛末を見ても、米国が、北京の「生殺与奪」にそれなりに深く関与できる立場にあることは明らかだ。しかも最近、米国の現政権は、中国の周辺諸国との関係、連携を工夫し、「中国包囲シフト」と思える動きを加速させている。ミャンマーは民主化への道を歩み始め、フィリピンは中国の海洋進出に一歩も引かない構えであるし、インドとパキスタンは一応、関係改善を宣言した。いずれも米国の思惑を濃厚に反映した結果かとも思われる。そんな流れのなかに、今般の世界ウイグル会議代表者大会の東京開催を置いて見るのはいかがか。
「ウイグル会議」で見ておくべき視点
このように背景を推測しつつも、一方でわれわれ日本人としてはやはり、自国で開催される世界ウイグル会議の代表者大会の行方に着目する必要がある。
同組織が掲げる、ウイグル人の人権状況の改善は、隣国の住人として看過すべきでない問題であるし、彼らが目標とする、ウイグル人による民族自決権の獲得という件は、われわれの将来にも大きく影響する問題だからである。大会では、今後3年間の活動方針と執行体制が話し合われ、決定されるという。その結果は、今後の世界におけるウイグル運動の行方はもちろんのこと、アジアそのものの行方をも大きく左右しかねない、といっても過言でないだろう。
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