2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2020年3月13日

サービタイゼーションでスケールアウトする
事業モデルへの転換を果たす

 こうしたなかで、世界の製造業の潮流は、製品を作るだけではなく、その製造プロセスをソフトウェアで「ブラックボックス化」して、サービスとして提供する「サービタイゼーション」にまで進んでいる。

 ポイントは「スケールアウト」にある。つまりビジネスの規模を拡大することで、それは「製品」を作って終わりではなく、新しい「産業」を創出することなのだ。これは、第4次産業革命の本質とイコールの関係にある。

 これも皮肉な話だが、2010年以降、最先端技術に関してドイツ企業はこうした段取りを整えて中国に進出した。中国側からすると、ブラックボックス化されているがためにノウハウが全く落ちてこない。そんな中に、日本企業がドイツ企業のような対策を講じることなく、中国に最先端技術を持って行くことで、歓迎されている。日中間の関係改善の背景には、こうしたこともあるという。

 このように聞くと「現場の熟練」などが不要になると思えてくるが、そうではない。新たなブラックボックス化すべき要素を生み出すために、現場は常に改善を続けて行かなければならない。必要なのは、その知見を形式知化するための、オペレーションズ・マネジメント(OM)部門の設置だ。

 「逆にいえば、誰も真似できない製造ノウハウは日本の現場にあるのです。そこをビジネスチャンスととらえられるかどうかです」(藤野さん)

優秀な現場がなんとか支えてきた

 さて、ここで疑問が起こる。どうしてこれだけの大変革が起こっているにもかかわらず、日本の製造現場は変わることができないのだろうか? その疑問に対しては、藤野さんも、梶野さんも、こう口をそろえる。「現場が優秀だからです」。

 現場が優秀だからこそ、これまでのやり方でもなんとか世界と伍することができてきたし、経営者も問題に気付かずにいることができた。だが、今後は危うくなる可能性が高いという。

 例えば、現場の技能継承一つとってもそうだ。熟練者の経験や勘は、彼らが退職してしまえば、なくなってしまう。だからこそ、早く形式知化しなければならない。そして、それをデジタル化して組織として共有する。


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