2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2012年5月16日

 今からちょうど20年前の1992年12月、ワトソンら3人の活動家がノルウェーを訪れ、北部の町で深夜、捕鯨船に侵入した。そうして、バルブを開放してエンジンルームに海水を浸水させ、船を航行不能状態にさせた。

 この際、ノルウェー司法当局はきっちりと証拠固めを行い、捕鯨船沈没の嫌疑で立件した。ワトソンらがすぐに国外逃亡したため、国際指名手配し、97年4月、ワトソンが当時の妻とともにオランダ・アムステルダムの国際空港に立ち寄った際に、オランダ司法当局がこの逮捕状を執行したのである。

 結局、ワトソンはオランダの刑務所で80日間、服役した。そのほかにも、ワトソンはカナダのアザラシ漁妨害で前科があり、ワトソンが事あるごとにメディアに流す「これまで一度も逮捕されたことはない」との主張はまったくのデタラメなのである。

釈放キャンペーンで「救え救え詐欺」展開も

 第二に、仮にワトソンがドイツやコスタリカで長期拘束されたとしても、リーダーを失ったシー・シェパードにとって必ずしもマイナスに働く要素ではないということ。

 これまでの活動歴から判断すると、シー・シェパードは今後、「フリー・キャプテン(船長を釈放せよ)」などと銘打って世界各国でキャンペーンを始めるはずだ。そして、弁護費用や支援費用などで寄付をよびかけ、むしろ手元に入る活動資金は現在よりも増える可能性がある。そうして、集まった寄付の収支報告をせずに、別のキャンペーンなどに転用して、団体の勢力拡大に用いるのである。私は、寄付者の善意の心を巧妙にだますこの手法を「救え救え詐欺」と名付けた。

 ワトソンは、かつての著書で「派手派手しいドラマを演出して、相手をだましなさい」「人々の信頼を勝ち得るために、犠牲者のふりをしなさい」と仲間に諭した戦略家でもある。自分に降りかかった災難でもあの手この手で団体のプラスになるように持って行く。団体にはワトソンの戦略を身につけた右腕なる活動家が何人もいる。

「ノルウェー人への公開状」

 ワトソンは先に挙げたノルウェーの捕鯨船沈没事件の際、「ノルウェー人への公開状」と題した書状を地元新聞社に送りつけ、政府とノルウェー社会を挑発した。参考事例となるため、長文であるが引用したい。

 「もし、ノルウェーが私を立件することを決定したのなら、裁判は、ノルウェーが続ける違法行為(捕鯨)について、国際世論が注目する公開討論の場となるであろう」(中略)。

 「もし、私が有罪となるのなら、シー・シェパードは戦いを継続する。そして私は、刑務所を鯨保護の闘争を継続するための事務所代わりにして、あなたがたの国の手厚いもてなしを最大限に利用するだろう。危機に晒されているクジラ類の運命を思えば、私が投獄されることなど全く憂慮はしていない。刑務所暮らしをして、私はノルウェー製品のボイコット運動を組織する強力な橋渡し役を務めよう」


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