ワトソンの言動をつぶさに見てみると、数々の得意パターンがあり、物事の展開によって、そのパターンを繰り返しているのに過ぎないことがわかる。この挑発文の「クジラ」と「サメ」を、「ノルウェー」と「コスタリカ」を置き換えれば、彼がコスタリカに引き渡された後に始める活動がどういう性質のものかがわかるだろう。
日本政府がやるべきこと
(2012年1月18日 日本鯨類研究所提供)
そして最後に、日本政府は、コスタリカだけでなく、ドイツの関係当局にも、シー・シェパードの暴力やシーマンシップにもとる数々の違法行為の実態を訴え、日本人や日本の所有物に被害を与えた事件について、ワトソンに法の裁きを受けさせるよう働きかけるべきである。
日本はドイツやコスタリカと犯罪人引き渡し条約を結んでいないため、両国はワトソンの身柄引き渡しを強制することができないし、日本は捜査権を行使して両国で取り調べを行うことはできない。しかし、日本政府の粘り強い訴えに基づく両国の“好意”でワトソンの日本への身柄引き渡しが可能になるという。日本への身柄引き渡しは、即逮捕、司法手続きに入ることを意味する。
シー・シェパードが日本に及ぼしている被害は、捕鯨船や捕鯨船員に対してだけではない。ワトソン集団や彼の支援者たちは日本の伝統食文化を損なわせるネガティブイメージを世界中に流布しており、こうした被害は金額では算出できない。
近年、シー・シェパードは正式メンバーを和歌山県太地町に常駐させ、地元の伝統漁業を妨害するため、世界中の支持者に参加や寄付を呼びかけている。その結果、のどかな港町は世界中の環境保護活動家が注目する喧噪の町となり、漁師らはシー・シェパードの言葉の暴力や執拗なストーカー行為に悩んでいる。
また、南極海の調査捕鯨を継続するために、日本政府は、シー・シェパード対策として妨害抑止船を派遣せざるを得ず、この船の予算化で年間数億円以上とも言われる、本来なら投入しなくてもよい公金が消えていくのである。
法治国家としての威厳を示すために、そして、シー・シェパードが日本に与える被害と悪影響を払拭するために、ワトソンの身柄がドイツからコスタリカに引き渡されるのなら、日本政府はコスタリカ政府に対して、根気強く日本への身柄引き渡しを交渉していかなくてはならないと私は考える。
ドイツはなぜ日本の手配書を無視したのか
また、ドイツ政府については、日本もICPOを通じてワトソンを国際指名手配しているのに、今回なぜ、コスタリカだけの逮捕要請を聞き入れ、日本の手配書を無視したのか、大いなる疑念が残る。