ましてや、ドイツは日本の友好国である。場合によっては正式に抗議を行わなくてはならないし、この際、あらゆるチャンネルを通して、ドイツ社会に日本の水産業と伝統文化がいかにシー・シェパードによって被害を受けているかを説明する必要性がある。
なぜ、シー・シェパードがここまで成長したかと言えば、その要因の1つは、日本政府がこれまでシー・シェパードの活動を過小評価して、各国当局に働きかけを怠ってきたからに他ならない。テレビ番組などを通して世界的にも知名度が高まったワトソン集団は、さらなる仲間を増やそうと、たとえば東日本大震災の実態も悪用して、日本のネガティブイメージを広めている。ワトソンは、東日本大震災の直後、「Tsunami」と題する創作詩を発表し、海の神が怒り、日本に天罰が下ったと語ったのである。
もう1つ付け足せば、コスタリカの事件は、環境テロ集団としてのシー・シェパードの特徴を裏付けることにもなり、日本側が米シアトルで進めている調査捕鯨妨害差し止め訴訟の行方にも影響を及ぼす可能性もある。捕鯨文化を守れるかどうかの分水嶺にもなりかねないこの裁判を有利に展開するために、日本政府も積極的に関与すべきである。
ワトソンの挑発に応戦してはいけない
環境保護活動家として40年間もこの道で生き抜いてきたワトソンには、ハリウッドのVIPや各国の有力政治家をはじめ、世界中の国々で築き上げた友好関係で得た味方も多い。捕鯨問題では四面楚歌にある日本が動けば、シー・シェパード側の反撃も予想される。
しかし、彼らが今後、流すであろうデマやディスインフォメーション(意図的な嘘)に惑わされたり、ただいたずらにワトソンの挑発に応戦してはいけない。
日本政府は、事態の推移について粛々と事実確認をして、するべきことを実行に移して、反論すべき事は淡々と反論すれば良いのである。事が派手に展開すればするほど、誰よりも喜ぶのは、捕鯨の「違法性」を世界に訴える機会を得るワトソン張本人なのだから。
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