世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年3月17日

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 台湾の蔡英文政権は、経済面での中国依存度を低下させるため、中国に進出した台湾企業の台湾本土への移転や東南アジアへの移転を進める「新南向政策」を打ち出している。ただし、昨年の輸出額のうち中国向け(香港を含む)は40.1 %に上り、蔡政権がスタートした2016年からほとんど変わっていない。また、昨年11月時点での台湾の対外投資累計額も対中国が56.7%を占めるなど大きな変化は見られない。

XtockImages/iStock / Getty Images Plus

 このような状況下で、ブルッキングス研究所のハス研究員は‘This US-China downturn may be difficult for Taiwan’と題する論評(同研究所のブログおよび台北タイムズに掲載)において、米中貿易紛争が今後とも緊張状況を続ける場合、台湾経済への悪影響は避けがたいとして、台湾の半導体製造企業の例を挙げて、具体的に問題点を指摘している。

 ハスは、まず、米中貿易摩擦においては、関税の問題は副次的であり、基本的対立は技術分野の対立にあるとして、次のように主張している。

(1)中国企業のHuawei(華為)は、最近、英国から5G ネットワークへの参加を許可されたが、これは米国にとっての痛手であり、情報セキュリティーの面においてのリスクを高めるものとして米国内では超党派の警戒心を高めている。そのため、米国としては、Huawei の技術的進歩を遅らせようとする賭けに出る可能性が大きい。

(2)台湾の半導体企業の多くは、Huaweiをはじめ、中国企業が必要とする半導体部品の重要な供給者である。(中国企業では製造できない)。台湾企業の多くは中国の高度な半導体製造に欠かせないサプライ・チェーンであるが、特に、台湾のTSMC(台積電 Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)の売上の20%が中国向けであり、世界の半導体業界をリードしてきた。TSMCにとっては、HuaweiはApple(米)に次ぐ大顧客である。

(3)米国はこのような状況を踏まえ、中国への高度半導体チップ売却を制限するために、台湾当局や台湾企業に協力を求めてくる可能性が大きい。

(4)米国がHuaweiへの対処などから、対中国輸出規制を強化することとなり、結果的にTSMCなど台湾の半導体企業に大きな不利益をもたらす可能性があるなら、台湾としては、米国との間で米台貿易協定を結んだり、環太平洋経済連携協定(TPP)に加入したりして、台湾の利益が侵されることのないように務めるべきであろう。

 出典:‘This US-China downturn may be difficult for Taiwan’(Ryan Hass, Brookings Institute/Taipei Times, February 24, 2020 )

 翻って、現実の問題としてトランプ政権と蔡政権のあいだでHuawei ,TSMCなどの抱える問題点が議論されているかどうか、詳細については詳らかにしないが、水面下で米台間で話し合いが行われていてもなんら驚くべきことではないだろう。いずれにせよ、台湾先端企業の抱える問題が、時間はかかるであろうが、貿易協定やTPP のようなより広い枠組みのなかで議論され、処理されるようになることが望まれることは言うまでもない。

 中国進出の台湾先端企業にとっては、当面、困難な道のりが続くこととなろう。

  
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