世界の記述

2020年2月14日

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井上雄介 (いのうえ・ゆうすけ)

台湾ライター

1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。天津南開大学へ留学経験あり。共同通信記者、時事通信上海支局勤務、衆院議員政策秘書などを経て現在に至る。

 現職の蔡英文総統の大勝で終わった1月の台湾総統選挙。立法院(議会)でも与党・民進党が過半数を維持した。与党が香港のデモをきっかけに高まった、台湾人の反中感情に訴えたことが最大の勝因だが、野党・国民党の高齢化が激しく、若者の支持を遠ざけたことが原因との見方が党の内外で広がっている。

蔡英文総統の勝利に沸く人々(AP/アフロ)

 民進党は最初から、若者をターゲットにしていた。蔡総統の「一国二制度」拒否の主張は、生来「台湾アイデンティティ」を持ち、「天然独」と呼ばれる20~30歳代の若者に向けられた。この世代は、香港の「二の舞」を心底恐れている。与党は「香港から台湾へは航空券1枚、台湾から香港へは投票用紙1枚」などのフレーズで巧みに恐怖をあおり、選挙直前の世論調査によると、40歳以下の世代では蔡総統支持が7割を占めた。国民党の韓国瑜候補は、支持者に中高年が多いこともあり、「天然独」の気持ちがくみ取れない。最後まで親中国姿勢を捨てきれず、若者に嫌われた。

民進党は立法院選挙でも、有望な若手を「党の顔」に仕立てた。2014年に立法院の議場を占拠した「ひまわり学生運動」のスタッフで「女神」と言われ、コスプレーヤーとしても知られる賴品妤さん(27)を首都圏である新北市の激戦区に投入して圧勝。民進党は昨年7月、ひまわり学生運動でリーダーだった、林飛帆氏(32)を副秘書長に抜擢して、今回の選挙の若者対策で指揮をとらせた。

ゴールドマン・サックス出身の呉怡農氏(39)は、初出馬ながら台北市で、国民党の現職で蒋介石元総統のひ孫の蒋万安氏(41)に挑んだ。蒋氏ともども爽やかな風貌から「イケメン対決」として話題をさらい、呉氏は惜敗したものの、民進党の若手に人材が豊富なことを強く印象づけた。

 国民党側は若者向けを意識した形跡が薄い。呉敦義主席(72)ら執行部は高齢男性が目立ち、しかも10年ほど主な顔ぶれが同じ。議員候補も高齢化が進み、せっかく若手が出ても、選挙の応援で前面に立つ地方議員に高齢者が多く、選挙活動に清新さが欠けた。さらに、議員候補の1人は「香港の警察を支持する」と言い放ち、「天然独」の若者の気持ちをさかなでした。

 国民党は今後、どれだけ若返れるかが党勢回復の一歩となる。3月初めに行われる党主席選挙に名乗りを挙げたのは、今年100歳の最長老カク柏村・元行政院長の長男で、前台北市長の郝龍斌(67)と、若手の代表格の江啓臣・立法委員(47)。郝氏は「豊富な実務経験」をアピールするが、新鮮さに甚だ欠ける。対する江氏は「世代交代」を訴えるが、党内で巻き起こる党改革を求める声に、どれだけ応えられるかは未知数だ。

  
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