2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年2月20日

 台湾の頼清徳・次期副総統は、米ワシントンで2月6日に開催された朝食会National Prayer Breakfast(各国から政治的、社会的、経済的エリート、宗教関係者を3000人以上も招く朝食会で、米大統領も出席する)への出席を目的に訪米した。この朝食会に台湾から副総統格の人物が招待されるのは異例のことであるが、頼氏が昨年1月に行政院長を辞任した時から、主催者側より熱心な勧誘があったらしい。

Niyazz/iStock / Getty Images Plus

 頼氏は、米国滞在中、親台湾派の有力議員たちと会談したり、ホワイトハウスのNSCを訪問するなどして、米台間の政治的交流が活発であることを強く印象付けた。

 2月4日には、ジム・リッシュ上院外交委員長(共和)、ロバート・メネンデス同委理事(民主)、コリー・ガードナー同委東アジア・太平洋・国際サイバーセキュリティ政策小委員会(共和)の3人と同時に会談した。会談で、リッシュ委員長は、新型コロナウィルスへの世界的対応への台湾の完全な参加を支持するとともに、米台FTAの模索への完全な支持を表明した。米台FTAは、今後の米台関係における最重要課題の一つであり、動向が注目される。メネンデス理事は「二国間安全保障関係であれ、経済・通称関係であれ、米台関係の重要性はいくら強調してもし過ぎることはない」と述べた。また、ガードナー小委員長は、「私は、米議会が、台湾関係法、台湾旅行法(注:米台間の当局者の交流を勧奨)、アジア再保証イニシアチヴ法を含む米国の法律に従い、台湾と台湾人のために主張し続けることを改めて確約した」「中国が台湾の合法性を否定する攻撃的なキャンペーンを続ける中、米国が台湾の活気ある民主主義を支持し、米台の人々の友好的な絆を更に強化することは、死活的に重要」などと台湾への強い支持を表明したほか、WHOの台湾排除に懸念を示した。3議員の発言要旨は、米上院外交委員会のHPに掲載されている(‘RISCH, MENENDEZ, GARDNER MEET WITH TAIWANESE VICE PRESIDENT-ELECT WILLIAM LAI’, Feb 4)。

 また、2月3日には親台湾派のマルコ・ルビオ上院議員(共和)と会談、米台関係強化や国際機関への台湾の参加について意見交換をした。2月5日にはナンシー・ペロシ下院議長(民主)とも会談している。ペロシ議長も台湾への支持を継続する旨を伝えた由である。頼氏と各議員の会談から、米議会が超党派で台湾を強く支持していることが改めて伝わってくる。

 一方、2月5日に、頼氏はホワイトハウスのNSCを訪問、米当局者と約70分にわたる対話を持った。関係筋によれば、オブライエン国家安全保障担当補佐官もその場に居合わせたという。頼氏は、ホワイトハウスを訪問した台湾政府関係者としては、1979年の米台断交以降、最高位の人物となる。トランプ政権の台湾重視の姿勢は明確である。

 今回、頼氏は、「私人」の立場で訪米した。台湾外交部(外務省)は、頼氏が「私人」として訪米したことを理由に、詳細についてはコメントを差し控えている。しかし、「私人」の立場であれ、次期副総統の訪米は、米台関係がますます緊密化していることの強いシグナルになった。

 中国外交部の華春瑩報道官は、頼氏と米議員、米当局者が接触したことに強く抗議し、「一つの中国」の原則を遵守し米台当局者の交流を止めるよう求め、米台関係に深刻な害をもたらさないよう米国は慎重に行動すべきである、と警告した。しかし、これは型通りの抗議に過ぎない。今や、「台湾旅行法」の精神に則った米台間の活発な高官交流は、「新常態」であると言ってよいであろう。

  
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