東日本大震災の津波による被害が広がる中で、津波の被害から逃れた介護施設では、介護が必要な高齢者のショートステイ機能が働かず、一般避難所では、元気だった高齢者も廃用症候群(=体を動かさないことにより、筋肉、骨などが萎縮し、体全体の機能が低下)が起こっている状況あります。
これはまさに、「地域包括ケア」そのものの概念の導入・実現が求められている状況だといえます。
たとえば、財政破たんした夕張市の医療再生のプロセスでの議論で役立った「地域包括ケア」の概念は、その時だけの話で終わってしまっていいのでしょうか?
医療過疎と向き合いながら、従来通りの医療供給体制にはない、在宅をメインにした医療改革の推進が望まれたはずなのに、うまくいかないのはなぜでしょうか?
欠かせない「住まい」という視点
これからの医療が目指すべき方向性を考えるには、従来のように、病院の中だけの医療や、医療関係者だけの議論では、もはや拡がりはないと考えます。今後は、患者・家族が地域における一人の「生活者」である、ということを視野に入れた、包括的なケアの概念を持った医療連携が必要ではないかと考えています。実はこれがとても難しいのです。 それには、「住まい」という視点も欠かせません。
私たちは昨年夏、新宿区の団地内の空き店舗に「暮らしの保健室」という、新しい取り組みを始めました。看護師やボランティアが常駐して、来訪する高齢者が気軽に医療や介護の相談ができる場所をつりました。
詳細は次回、お伝えしたいと思いますが、地域に必要な医療を届けられる環境にしながら、医療や介護が重装備にならないために、「予防」という観点も共に考えられる「まちづくり」にまで発展できたらと願う所存です。
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