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2020年3月18日

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飯田泰之 (いいだ・やすゆき)

明治大学政治経済学部准教授

東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。駒澤大学准教授などを経て、2013年より現職。専門は日本経済・ビジネスエコノミクス・経済政策・マクロ経済学。近著に『日本史に学ぶマネーの論理』。
  

必要な経済対策費は合計30兆円 
政府検討の財政措置とは桁違い

 新型コロナウイルスによる経済的影響について、様々な研究機関による推計が報告されている。しかし、2月中の状況・データから算出されたものが多いため、そのインパクトが過小評価されている可能性は高い。

 2月27日に政府は小中高およびに特別支援学校に対して、2週間の休校を要請した。同措置の実効性について筆者は専門的な知見をもたない。しかし、同要請を受けて消費動向を左右する「世間の空気」は一変した。一斉休校の第一週である3月に入り、繁華街の人通りは明らかに減少している。2月末の時点で銀座・北新地の夜間の人の流れが半減しているとの調査もある(日本経済新聞3月8日朝刊)。

 大企業を中心とした飲み会・接待の自粛が大きな原因と考えられるが、3月に入るとその自粛が東京・大阪以外に、また、個人的な飲食や外出にまで広がっている。学齢期の子供を持つ世帯では「子供が休校なのに親が外食して帰るわけにはいかない」との思いもあろう。さらに、時差出勤や在宅勤務の増加によって、ランチタイムの売上にも大きな影響が出始めている。飲食サービス業の販売額は年間約27兆円(総務省「平成27年産業連関表」)である。

 加えて、イベントの中止やテーマパークの休園によって旅行・観光への影響も拡大している。観光関連消費は国内旅行による消費が年間約20兆円、訪日客によるものが約5兆円である(観光庁「旅行・観光消費動向調査」、「訪日外国人旅行調査」)。また、展示会やコンサート・スポーツといった国内のイベント産業の市場規模は年約17兆円と推計される(日本イベント産業振興協会「国内イベント消費規模推計」)。

 これらの3業種は、重複分を考慮しても年間約50兆円、月4兆円以上の消費市場である。さらに現下の緊縮ムードの中で影響を受ける業種はこれら関連業種に限定されるものではない。新14型コロナウイルスによるパニックが続く中では少なくとも月5兆〜6兆円ほど、1年間のGDP(約530兆円)の1%に近い需要の縮小が続くと想定できる。このような状況で経済政策は今後の悪循環を断ち切るために最大限の努力をしなければならない。まずはその規模感から考えていこう。

 2%の消費増税は比較的良好な景況においても経済成長率を1%程度引き下げると予想される(内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル」)。しかし、今次の消費増税は景気後退の中で行われた。景気後退そのものの影響によって経済成長率が1%ほど下押しされている中で、さらに消費増税の影響が懸念される状況では、必要な経済対策費は大きくなる。政府は昨年12月に13・2兆円規模の経済対策を発表したが、そのGDP引き上げ効果は1・4%ほどと試算される(内閣府推計)ため、2%のGDP引き上げを狙うにはさらに5兆円ほどの積み増しが必要だ。

 これに加えて、2月半ばから顕在化しつつあるコロナウイルスの影響は、その収束までの期間月×5兆円以上の需要縮小が想定される。仮に様々な対策が奏功して4月半ばでその影響が収束したとしても10兆円規模の景気のてこ入れ策が必要だろう。

 現時点(3月8日現在)で、政府は19年度予算の予備費、20年度予算の予備費などから財政措置を拡大するとしているが、予備費は2年分をあわせても8000億円ほどであり、まさに桁が違う。すでに与党内でも追加的な経済対策が主張され始めているが、その規模としては最低でも、すでに予定されている経済対策に加えて、15兆円——合計で30兆円という数字が1つの目安になるのではないだろうか。コロナウイルスの影響の期間と範囲によって、より大きな対策が必要であるのはいうをまたない。

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