WEDGE REPORT

2020年3月18日

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飯田泰之 (いいだ・やすゆき)

明治大学政治経済学部准教授

東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。駒澤大学准教授などを経て、2013年より現職。専門は日本経済・ビジネスエコノミクス・経済政策・マクロ経済学。近著に『日本史に学ぶマネーの論理』。
  

問題となる財政措置の使途 
直接給付の規模拡大の検討を

 30兆円規模の財政措置となると、大きな問題となるのがその使途である。一般的な景気後退への対応であれば公共事業の積み増しといった手段が検討されるだろう。しかし、現在の建設業には、そこまでの規模の受注・施行を行う生産キャパシティの余裕がない。

 ここで、特にコロナショックによって需要を失っている業種の多くがサービス業であることに注意が必要だ。サービス業への直接的な公共支出を行うことは極めて難しい。代替的な手段として個別家計への直接給付が支出の候補として考えられる。おりしも香港では、永久住民全員への1万香港ドル(約15万円)の直接給付と19、20年の所得税・法人税の減免を決めた。民主化運動へのガス抜きという側面もあるが、参考にできる施策である。

 現在では育児関連の休業のみについて雇用者限定で行われている賃金保障を、育児関連以外の休業や、自営業者や零細事業主に広げる形で直接給付を行う必要があろう。その手段としては19年の所得税・法人税の還付と半年間の社会保障費の免除が有効だろう。

 また、旅行・観光関連産業、飲食等の個人向けサービスは地元資本・中小零細資本のシェアが高い。これらの業種の縮小が、地域経済に与える影響は深刻である。コロナ倒産・コロナ廃業を防ぐためのスキームとして、現時点では政府の信用保証による金融融資を検討しているが、十分なものではない。同期間の売り上げの急激な減少を補ほ填てんするために所得税・法人税の還付や接待・交際費の費用計上に関するルールの時限的な緩和などをもって臨む必要があるだろう。

 国民にとって政府の存在は一種の保険になぞらえることができる。個人の努力では予想・対処できない大きなショックに社会・経済が見舞われたとき、救済に乗り出すことができる存在は今のところ政府しかない。「もしものとき」に私たちの生活を守ってくれるからこそ政府が存在し、財政が存在する。この難局の中において、日本政府は本来の役割を果たす責任がある。

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■脱炭素バブル  したたかな欧州、「やってる感」の日本
Part 1  「脱炭素」ブームの真相 欧州の企みに翻弄される日本
Part 2    再エネ買取制度の抜本改正は国民負担低減に寄与するか?
Part 3  「建設ラッシュ」の洋上風力 普及に向け越えるべき荒波
Part 4    水素社会の理想と現実「死の谷」を越えられるか
Column    世界の水素ビジョンは日本と違う
Column    クリーンエネルギーでは鉄とセメントは作れない
Part 5  「環境」で稼ぐ金融業界 ESG投資はサステナブルか?

  
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◆Wedge2020年4月号より

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 

 

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