タービンで使用された蒸気は復水器で温水に、そして冷却塔で冷やされ、「還元井」と呼ばれる井戸で地中に戻される。熱水は地下に戻されるため、地下水の枯渇を予防することになる。
この地熱発電の仕組みをシングルフラッシュ方式という。また、低温でも沸騰する二次媒体(アンモニアなど)を使ったバイナリー発電方式というものもあり、80~100度の熱水を利用することができる。
脱石油依存を狙うインドネシア
世界の注目が高まるなかで野心的な目標を掲げるのがインドネシアだ。設備容量でいえば、アメリカの310万kW、フィリピンの190万kWに次ぐ120万kWで世界3位。だが、25年までに950万kWにまで増やす目標だという。
西日本技術開発地熱部長の田篭功一氏は「現在インドネシアで実施中のプロジェクトが5~6件ある」と話す。同社は07年、インドネシアの今後20年間の地熱発電計画のマスタープランを作成する役割を担うなど、大きな信頼を得ている。現在、スマトラ島サルーラ地点で、14年の稼働を目指して九州電力などが進めている地熱発電所建設の総合コンサルタントを行っており、同発電所の合計出力は33万kWと世界最大級の大きさになる。西日本技術開発が運営をサポートする九州電力の大分・八丁原地熱発電所(11万kW)の3倍の出力。「石油・ガス、プラスαとなる資源の活用を真剣に考えている」(田篭氏)のがインドネシアだ。
西日本技術開発は、昨年ペルーとボリビアからも事業化調査の仕事を受注した。ボリビアでは、電気自動車の電源として使用されるリチウムイオン電池の原材料となるレアメタルを採掘する鉱山用電源として、地熱発電を利用しようという計画があるという。標高3000メートル以上の場所に採掘場所があるため、送電線による電力供給が困難であるからだ。
開発だけではなく設備でも強い日本
地熱発電の設備においても日本企業が高いシェアを持っている。地熱発電プラントの心臓部ともいえるタービンは、富士電機、三菱重工、東芝の3社で約7割の世界シェア。火力発電で使われる蒸気は純水に近いものから作られているが、地熱発電で使う蒸気は地下からくみ上げているため、様々な不純物が混じっている。富士電機発電プラント事業部火力・地熱プラント総合技術部の山田茂登氏は「不純物が金属を腐食させる原因になるので、タービン羽に使う材料の材質、設計などに細かい気配りが必要になる」と話す。
地熱発電用のタービンは「原子力や火力に比べて出力が小さいわりに、手間がかかる忍耐力が必要な仕事」(山田氏)。発電用大型タービンを手がけるGEなどは、70年代には撤退してしまった。逆に富士電機の会社規模からすると、地熱用タービンは「自社の体格にふさわしい仕事」だった。
今後海外を中心に地熱発電設備の建設が増えていくが、信頼性や実績が求められるため、外国勢の参入ハードルは高い。中国製のタービンも出始めているが、チップ1つで出来上がる電子機器とは違い、アナログ技術そのものがものを言うため、キャッチアップされる心配も今の所はない。ODA以外の国際競争入札が必要ない案件については、日本の3社だけしか呼ばれていないことが多いという。