2024年4月20日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2012年5月25日

(図表2)オランド新仏大統領の主要選挙公約
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 もっとも、オランド新大統領の選挙公約を見る限り、効果的な成長政策が見いだせているとは言い難い。オランド新大統領の選挙公約では、大企業増税を前提とした中小企業の減税とか、雇用維持を主眼とする公務員等の増員等が主張されている。しかし、選挙公約は全体的に所得再分配的な色彩が強く、これだけで経済活力が回復すると見るのは難しい(図表2)。

 EUの成長政策に期待されることは次の2点に集約される。一つめは、効果的な成長政策が出てくるのかという点だ。二つめとしては、成長政策に即効性があるかという点だ。効果が乏しかったり、効果発現までに長期間かかるような政策では、あまりに厳しい欧州経済の現状では間に合わない。

 財政制約が大きい中では、この2つの目標を満たす成長政策は、金融政策の一層の活用、あるいはエコカー補助金や太陽光発電補助金といった、相対的に少額の補助金で大きくかつ即効的な経済効果が見込める政策手段にならざるをえない。

 規制緩和も財政負担は大きくないが、即効性がある分野となると、需要があるのに種々の意図から競争を制限している分野、たとえば医療介護や労働市場、国有企業・公共サービスの民営化といった分野となり、決してハードルは低くない。

 この中で、当面はECBによる金融緩和政策やEU各国の追加資金供給策などにウエイトがかかりそうだ。金利引き下げ余地はあり、金融緩和はユーロ安にもつながろう。また、金融機関への資金注入などは、企業融資が滞ることや金融市場が収縮することへの対策となる。

 しかし、ECBの金融緩和策や各国の資金供給策は万能薬ではない。とりわけ競争力が乏しいギリシャ企業の活力が金融緩和だけで上がるとは考えにくく、総合的な産業育成策も欠かせない。

欧州版成長政策は
日本の手本となるかもしれない

 政府債務比率が主要国で最も大きい日本にとって、足元の欧州情勢は他人事ではない。財政赤字をコントロールできなくなった場合にどのような危機の連鎖が起きるかが、ギリシャで毎日明らかになっているからだ。それは、恐慌的な景気であり、政治の安定性崩壊であり、国内金融資産ばかりか国民までも国外流出が加速するといったことだ。


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