アジア太平洋地域にとって幸運なのは、「アジア太平洋地域重視」という路線が既にオバマ大統領によって明確に打ち出されていることだ。国防省からのメッセージも同様で、特にパネッタ国防長官は「米国防予算削減がアジア太平洋地域に影響を与える形で行われることはない」という趣旨の発言を何度も行っている。そうは言っても、イランの核疑惑やシリアの内政状況など、中東地域で目を離せない状況が続く以上、限られた予算の中で中東とアジア太平洋の両地域に米国は目配りをすることになる。万が一中東で武力衝突などの緊急事態となれば、中東に兵力を集中させる必要が生じ、アジア太平洋における米軍のプレゼンスはどうしても低下する。
人道支援・災害救助分野で自衛隊はイニシアチブを
このような状況で日本に何ができるのか。
先ず何よりも大事なことは、「アジア太平洋重視」「同盟国との協力関係重視」というアメリカの戦略を有効活用して常に何らかの形で米軍がこの地域にプレゼンスを維持する状態を作り続けることだ。4月27日に発表された日米安全保障協議会(2プラス2)の共同声明では、北マリアナ諸島で米軍と自衛隊が共同訓練するための施設の建設について言及があったが、これはその良い例と言える。
また、人道支援・災害救助に関する能力構築の分野で自衛隊がイニシアチブをとれることはたくさんある。この分野で日米が協力して、場合によってはオーストラリアなどと連携しながら、アジア太平洋地域内の各国の軍の練度を高めるための訓練や演習を実施していくことで、中東で緊急事態が発生した場合でもある程度の米軍のプレゼンスを維持するだけではなく、地域各国の軍の能力を底上げすることにより抑止力にギャップが生じることを防ぐことができるだろう。
ただし、上記のような活動を可能にするためにには、日本が防衛にそれなりの投資をしていることが大前提になる。過去20年近く、北朝鮮の核・ミサイル疑惑があっても、中国の軍事力近代化を目の前にしても防衛予算が停滞を続けている日本の状況には不安を感じずにはいられない。
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