中国では、2020年1~3月期の実質GDP前年同期比伸び率が-6.8%と四半期統計の取れる1992年以降初のマイナスに落ち込んだ。世界第2位の経済大国である中国の経済情勢は、日本を含め世界全体に大きな影響を及ぼす。リーマンショック後のような中国経済のV字回復は起こるだろうか。
マクロ経済政策のカードを使いきっていない中国
今回の新型コロナウイルスによる感染初期に中国政府が情報隠蔽を行い、初動の遅れがあったためウイルスの世界への蔓延を許してしまったと指摘されている。このような批判を意識してか、1月23日に武漢市を封鎖するという強硬手段を発動した後、中国政府はそれまでの遅れを取り戻すように、感染対策を次々に打ち出すとともに、マクロ経済政策面の措置を矢継ぎ早に実施している。
金融政策面では、1月31日付で中国人民銀行、財政部、銀行保険監督管理委員会、証券監督管理委員会、外貨管理局の5部門連名で30項目の金融政策措置の通知を発出した。この通知に従い、同日、人民銀行がコロナウイルス対策に必要な重点企業に貸出を行う銀行に、低利で資金を貸し出す3千億元(約4兆5千億円)の専用再貸出枠を設定した。この専用再貸出を利用して銀行が重点企業に行った貸出優遇金利には、財政が50%の補填を行い、実質的な金利負担は1.28%と大幅に低いものとなった。
また人民銀行が銀行の貸出金利の基準として公表している市場報告金利(LPR)は、2月20日に1年物で0.1%引き下げられ4.05%となった。2月26日には、人民銀行が銀行に対し、重点企業以外の企業に対する操業再開に向けた貸し出しに、再貸出枠5000億元(約7兆5千億円)をさらに設定した。3月16日には一定の条件を満たした銀行に対して預金準備率を最大1%引下げた。対象となる大型商業銀行の預金準備率は11.5%となった。4月3日には、中小銀行に対して4月15日と5月15日に0.5%ずつ計1%引き下げることが公表された。
財政政策についてみると、財政部は1月23日に新型コロナ対策費用として10億元(約150億円)の補助金を武漢市のある湖北省に支出することを公表している。その後、治療費用の財政補助の支出、新型コロナ対策物資の輸入関税や消費税免除などが打ち出され、2月6日の国務院常務委員会において、新型コロナ対策設備や物資に対する税制上の優遇措置や医薬品などの登録費用などの免除などが決定された。3月21日までに中央財政によるコロナ対策支出は257.5憶元(約3900億円)となっている。