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2019年10月16日

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露口洋介 (つゆぐち・ようすけ)

帝京大学経済学部教授

帝京大学経済学部教授。専門は中国経済、金融論。1980年東京大学法学部を卒業し、日本銀行入行。在中国大使館経済部書記官、日本銀行香港事務所次長、日本銀行初代北京事務所長を歴任し、2011年に日本銀行を退職。信金中央金庫、日本大学経済学部教授を経て2018年4月より現職。著書に『中国経済のマクロ分析』(共著)、『中国対外経済政策のリアリティー』(共著)、『アジア太平洋の未来図』(共著)、『中国の金融経済を学ぶ 加速するモバイル決済と国際化する人民元』(共著)など。

 中国では、9月下旬に中国人民銀行の易綱総裁が記者会見において、中央銀行デジタル通貨発行の可能性について言及し、にわかにその実現の機運が盛り上がってきた。その背景として、フェイスブックがデジタル通貨「リブラ」を2020年前半にも発行する計画を打ち出したことが挙げられる。中央銀行デジタル通貨とリブラの関係について検討し、中国人民銀行の考え方を探ってみたい。

(アフロ)

発行例のない中、現実味を出す中国

 9月24日に、中華人民共和国成立70周年活動の一環として開催された記者会見の席上、人民銀行の易綱総裁は中央銀行がデジタル通貨(以下中銀デジタル通貨)を発行する計画について発言した。中銀デジタル通貨はそれぞれの国の中央銀行が現在発行している現金に換えてデジタル化された通貨を発行するものである。易綱総裁の発言の要点は以下の4点である。

  • 人民銀行は2014年からデジタル通貨について研究してきた。
  • デジタル通貨は現金を代替するものであり、銀行預金を代替するものではない。
  • デジタル通貨の供給は中央銀行と商業銀行の二層運行システムによって行う。
  • 現在、発行のスケジュールは決まっていない。さらに研究や試行を重ねる必要がある。

 この発言では、まだ検討すべき事項が多く、中銀デジタル通貨発行の日程は決まっていないとされているが、中央銀行総裁が発行に言及したことから、近い将来発行されるのではないかという見方が急速に高まってきた。

 中銀デジタル通貨については、日本を含めた多くの国の中央銀行で研究が進められているが、まだ、発行された例はない。また、大部分の国では、発行の計画はないとしている。具体的に発行を検討しているのは、銀行券が急速に減少しているスウェーデンや、銀行サービスなどへのアクセスがすべての国民にとって必ずしも容易でない新興国、途上国など一部の国に限られている。そうした中で中国において中銀デジタル通貨の発行が現実味を帯びてきたため注目が高まっているわけである。日本を含めた各国の中央銀行も、中国で中銀デジタル通貨が発行されれば、その経験から多くのことを学ぶことができる。

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