2022年11月30日(水)

WEDGE REPORT

2019年10月16日

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露口洋介 (つゆぐち・ようすけ)

帝京大学経済学部教授

帝京大学経済学部教授。専門は中国経済、金融論。1980年東京大学法学部を卒業し、日本銀行入行。在中国大使館経済部書記官、日本銀行香港事務所次長、日本銀行初代北京事務所長を歴任し、2011年に日本銀行を退職。信金中央金庫、日本大学経済学部教授を経て2018年4月より現職。著書に『中国経済のマクロ分析』(共著)、『中国対外経済政策のリアリティー』(共著)、『アジア太平洋の未来図』(共著)、『中国の金融経済を学ぶ 加速するモバイル決済と国際化する人民元』(共著)など。

マネロン、テロ資金対策がカギを握る

 中国は、フェイスブックがリブラ発行計画を明らかにしたことによって、自らの中銀デジタル通貨を急ぐ方針を示したが、ここにきてリブラの計画通りの実施が危ぶまれてきた。前述のとおりG7をはじめとする各国政府や金融当局は、マネーロンダリングやテロリスト資金に対する規制の対象にリブラを組み込む方針であり、さらにプライバシーの保護や金融政策への影響などの検討も必要としている。フェイスブック側も各国の規制をクリアしてからサービスを開始するとしており、各国政府と規制監督上の合意が整うまでリブラの開始は行われない可能性が高まっている。

 その結果2020年前半開始という当初の計画は遅れるものとみられている。さらに10月4日には、リブラの運営組織であるリブラ協会の正式メンバーとなっていたアメリカの決済サービス大手ペイパルが脱退を発表した。各国の規制が強まれば、リブラが、国際間の送金が容易で低コストな暗号資産として成立するかも不確かである。

 中国人民銀行の易綱総裁は、9月の記者会見で、中国自身が発行を検討している中銀デジタル通貨についても、クロスボーダーの利用についてアンチマネーロンダリングやテロリスト資金対策、租税回避対策など様々な検討課題が存在することを指摘している。時間が許す限りこれらの検討を充分進めたいところであろう。中国の中銀デジタル通貨がいつどのような形で開始されるかについては、リブラの開始時期や各国における規制監督の内容によってリブラの利便性がどの程度のものとなるかによって大きく影響を受けそうである。中国の中銀デジタル通貨とリブラという二つのデジタル通貨の行方が注目される。

  
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