2019年から2020年にかけて、中国では新型肺炎の感染拡大や香港における反政府デモの長期化など、国内外から注目を集める様々な問題が起こっている。なぜこれらの問題は長期化することになったのか。それを解明するカギの1つが、中国における「中央」と「地方」の関係である。
共産党と政府が
一体で統治する中国
そもそも中国共産党はどのようにして広大な国土の全国的統治を実現しているのであろうか。その統治体制の特徴としては、共産党と政府が一体化していることがあげられる。行政機関の幹部人事は実質的に党が握っており、各地方政府の指導部は、ごく1部の例外を除き共産党員によって独占されている。
また、各行政機関内には党組織が設置されており、重要事項は党を通じて決定される。さらに各級党委員会の中には、政法委員会をはじめ同級の関連する行政機関を直接指導するための部門が設けられている。こうした仕組みのもとで、中国共産党による行政機関に対する統制は地方の隅々まで徹底されている。
中国の党政組織は中央、省級、地級、県級、郷鎮級の順に5段階に分かれており、地級以下は中央の直接的指導下にはない。例えば、省級党委員会の書記、副書記、常務委員、省長や副省長などの人事任免権は党中央に握られている一方で、地級党委員会の書記、副書記、常務委員らの人事を直接担っているのは省級党委員会である。そのため、地級以下の人事への党中央の影響力は制度上間接的なものとなる。
同様に指揮命令系統の面でも、中央が制度上直接的に指導するのは省級に対してであり、地級以下に対しては、省級を通じて間接的に権限が発動される。情報伝達の点でも、中央と地級以下とのやり取りは原則として省級を通じてなされることになる。
ちなみに、今回の新型コロナウイルスの発生源となった湖北省武漢市は、都市の規模、産業基盤や交通の要衝などといった重要性に鑑み、通常の地級市よりも大きな権限が付与された副省級市に指定されている。