中国 覇権への躓き

2019年11月1日

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加茂具樹 (かも・ともき)

慶應義塾大学総合政策学部教授

専門は現代中国政治外交。1995年慶應義塾大学総合政策学部卒業。同校法学部准教授等を経て2015年4月から現職。16年10月から外務省に転籍して在香港日本国総領事館領事を務め、18年10月に復職。

 10月1日に北京で開催された中国の建国70年を記念する式典では、史上最大規模と言われる軍事パレードが行われた。そこに見えたのは、グローバルガバナンスの発展と改善に貢献する意欲を示す大国が、力による統治を信奉する姿であった。

パレードでは軍人たちが華麗な装いで行進した(AP/AFLO)

 今日の中国政治と外交のキーワードは「強国」である。公式文書によれば、共産党は「中国が今世紀半ばに富強、民主、文明、調和のとれた、美しい社会主義現代化強国」となることを目指し、国家建設に取り組んでいる。

中国の目指す「強国」とは何か

 この「強国」とは何か。北京の政策決定サークルに近いと目される学者に質問すると「国際社会に侮られない国家」だという。言い方を変えれば「尊厳のある国家」である。

 中国の公式の歴史観によれば、1840年のアヘン戦争以来「東アジアの病人」と侮られていた中国は、共産党が指導する革命を経て1949年に中華人民共和国を建国し、立ち上がり、豊かになり、強くなる道を歩んで、尊厳を回復してきた。

 建国70年の祝賀大会とレセプションの場で習近平国家主席は、70年の歴史を次のように語っていた。

 「70年は人類の歴史の長い川の流れの中では指をはじくほどの瞬く間にすぎないが、中国人民と中華民族にとっては、大きく移り変わり、社会が変わった70年だった。中華民族は立ち上がり、豊かになることで強くなる偉大な飛躍を迎え、偉大な復興を実現する輝かしい前途を迎えている。これについて中華の子女は誰もがこのうえなく誇りを感じている」

 加えて習近平は、「この70年、全国の各民族人民は一致協力、刻苦奮闘によって、世界が目を見張る偉大な成果を収めた。今日、社会主義中国は世界の東方にそびえており、われわれの偉大な祖国の地位を揺るがすことのできるいかなる勢力もなく、中国人民と中華民族の前進の歩みを妨げることのできるいかなる勢力もない」と自負してみせた。

 中国のメディアは、「国際社会に侮られない国家」にむかう道、「尊厳のある国家」を取り戻す道を先導する指導者という姿で習近平を描いている。

 国家とは、力(軍事力)と利益(経済力)と価値(文化力)の体系によって形づくられているといわれる。国家間の関係、すなわち国際政治とは力と利益、そして価値の体系が複雑に絡み合いながら形づくられている。中国はいずれの体系においても近年、存在感を強め、「強国」としての姿をより一層鮮明に示している。

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