2024年11月22日(金)

中国 覇権への躓き

2020年3月30日

 新型肺炎問題の深刻化を受け1月20日になって、ようやく習近平から「重要指示」が出され、ほどなくして武漢市が新型肺炎封じ込めのために「封鎖」されるとともに、やがて中国全土にわたり厳しい外出制限が実施されていった。2月に入ると、湖北省党委員会のトップである蒋超良書記と武漢市党委員会のトップである馬国強書記が相次いで更迭され、それらのポストの後任には習近平の信任があついとされる応勇・上海市市長や、王忠林・済南市党委員会書記らが起用されることになった。あわせて湖北省公衆衛生部門のトップも解任された。

 反政府デモが長期化していた香港においても1月4日に、駐香港特別行政区連絡弁公室の王志民主任が解任された。そして、山西省党員会書記を歴任し当地ではびこっていた汚職摘発に手腕を発揮したものの、地方指導者としてはすでに定年に達していた駱恵寧氏が後任に据えられるという異例の人事が公表された。

 さらに2月13日には、香港問題を統括する国務院香港マカオ事務弁公室の張暁明主任が同副主任に降格され、その後任には習近平が浙江省党委員会書記を務めていた際の側近であった夏宝龍氏が任命された。これらの措置は、中央による香港をめぐる事態打開のための試みといえよう。

 しかし、地方幹部の間に「指示伺い」や事なかれ主義を蔓延させる、中央と地方の関係における基本構造は依然として変わっていないため、これらの措置はしょせん対症療法といわざるを得ない。

 地方に対する統制や監視体制をいくら強化しようとも、中央に地方から正確な情報が上がってこず、地方が問題拡大を防ぐための効果的な措置を自律的に打てないのであれば、新型肺炎拡大や「逃亡犯条例」改正をめぐるデモの長期化のような失政を今後も繰り返すことになる。行きつくところ、共産党一党支配体制の正当性を根本から失うことにもなりかねない。

 われわれは中国共産党による支配体制の強靭性のみならず、その脆弱性にも着目することにより、中国で起こっている出来事への理解を深めることができるであろう。

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◆Wedge2020年4月号


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