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2020年4月29日

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飯田将史 (いいだ・まさふみ)

防衛省防衛研究所 米欧ロシア研究室長

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学後、防衛庁防衛研究所に入所。スタンフォード大学東アジア研究専攻修士課程修了を経て、2020年より現職。専門は中国の外交・安全保障政策。

 その台湾では近年、中国からの遠心力が強まっている。16年5月に発足した民進党の蔡英文政権は、中国との関係を重視していた国民党の馬英九前政権と異なり、中国からの要求を受け入れず、台湾の自立性を高める政策をとってきた。20年1月の総統選挙を前にして、国民党の候補が優勢となる場面があったものの、香港での混乱が台湾市民の対中警戒感を高めたこともあり、蔡英文が総統に再選されて民進党政権が継続することになった。

 米国のトランプ政権は、蔡英文政権との関係を強めつつある。19年8月には、最新型の戦闘機66機を台湾に売却することを決定した。20年3月には、台湾の国際機関への参加を支援したり、台湾の外交的な孤立化を防止することなどを政府に求めた「台北法案」にトランプ大統領が署名し、「台北法」が成立した。

 中国は台湾の離反傾向を抑止しようと、台湾と米軍に対する圧力を強めている。習近平主席は19年1月に行った台湾政策に関する演説で、台湾独立勢力の活動と外部勢力の干渉に対して武力を行使する可能性を明言した。同年3月末には、中国の戦闘機2機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側を飛行した。

 6月には「遼寧」空母部隊がグアム沖まで展開したり、7月に対艦弾道ミサイル(ASBM)を南シナ海へ試射するなど、中国軍は米軍に対するけん制を強めた。10月1日の軍事パレードでは、既存のミサイル防衛網を突破する能力を持つとみられる極超音速滑空兵器を登場させた。

 そして12月には、大連で建造された初の国産空母「山東」が台湾海峡を通過して海南島まで航行、そこで習主席が出席して就役式が行われたのち、再び台湾海峡を通過した。20年2月には、中国軍の戦闘機や爆撃機、早期警戒機などが2日間にわたって台湾周辺で演習を行った。この演習について中国国防部の報道官は、台湾独立勢力に向けたものだと明言した。

「山東」就役式に出席した習近平国家主席
(XINHUA NEWS AGENCY/AFLO)

 こうした中国による軍事的圧力の強化を受けて、米軍は今年に入り対抗する動きを強めて、台湾海峡における活動を強化してきた。2月には、米空軍の特殊作戦機が台湾海峡を南下する飛行を行った。3月には、米海軍の駆逐艦「マッキャンベル」が台湾海峡を北上している。

 また米軍は、中国のA2/AD能力に対抗する兵器の開発も加速させている。昨年12月には、カリフォルニア州で地上発射型の中距離弾道ミサイルの実験を行い、今年3月にはハワイ州で、極超音速ミサイルの開発に向けた飛行体の実験に成功した。いずれのミサイルについても米国は、開発が完了した際にはアジア太平洋地域に優先的に配備する意向を示している。

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