WEDGE REPORT

2020年4月29日

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飯田将史 (いいだ・まさふみ)

防衛省防衛研究所 米欧ロシア研究室長

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学後、防衛庁防衛研究所に入所。スタンフォード大学東アジア研究専攻修士課程修了を経て、2020年より現職。専門は中国の外交・安全保障政策。

尖閣接近公船は5割増
「還暦」の日米同盟の強化を

 新型コロナウイルスがもたらす脅威に、日本を含めて世界中の関心が集中しているが、同時に進行している米中の軍事的な緊張の高まりにも、我々は注意を払う必要があろう。ウイルスの感染拡大で経済に大きな打撃を受けた中国では、感染の封じ込めに失敗した習近平指導部を批判する動きもみられている。共産党内における政治的な駆け引きが活発化する中で、「核心的利益」とされる台湾をめぐる問題が焦点化されるようなことになれば、中国の軍事動向の不確実性がさらに高まることになりかねない。

 中国軍の海洋におけるプレゼンスの強化は、日本の安全保障にも多大な影響を与える。尖閣諸島に対する日本の領有権に挑戦している中国は、日本周辺の海空域で艦船や軍用機の活動を拡大させている。今年1~3月期に尖閣諸島周辺の接続水域を航行した中国公船の数は、前年比5割増になっている。中国が日本に対する軍事力の優位に自信を深めれば、より大胆に軍事的な対日圧力を強めることになるだろう。

(出所)関係資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 今年、日米安全保障条約締結から60年を迎えた。中国による軍事力の急速な増強とプレゼンスの拡大が進む中で、日本にとっても米国にとっても日米同盟の重要性がかつてなく高まっている。

 日本としては、中国による力に依拠した現状変更を抑止するという共通の目標を米国と再確認したうえで、米軍との共同作戦に必要な自衛隊の能力の強化や、在日米軍基地の安定的かつ効果的な運用に向けた米国との調整などが求められよう。21世紀半ばにかけてアジア太平洋地域の平和と安定を保てるか否か、還暦を迎えた日米同盟の真価が問われることになるだろう。

Wedge5月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■新型コロナの教訓 次なる強敵「疾病X」に備える 
Part 1        「コロナ後」の世界秩序 加速するリベラルの後退
Part 2        生かされなかった教訓 危機対応の拙さは必然だった
Interview   「疾病X」に備えた日本版CDCの創設を急げ
Interview     外出禁止令は現行法では困難 最後の切り札は「公共の福祉」
Part 3        危機において試されるリーダーの「決断力」と「発信力」
Chronology  繰り返し人類を襲った感染症の歴史  
Column1     世界のリーダーはどう危機を発信したか?
Part 4         オンライン診療は普及するのか 遅きに失した規制緩和   
Column2     露呈したBCPの弱点 長期化リスクへの対策は?

  
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◆Wedge2020年5月号より

 

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