日本と日本人に向けて
インタビューの最後、ラビア総裁は「あらためて日本国政府と日本人にお礼を言いたい」と述べた。たしかに、今般の会議開催にあたって日本政府は北京の圧力をものともしなかったし、与野党の国会議員らも中国側からの内政干渉的反応をはねのけた。
野田総理は、北京での温家宝首相との会談の席で、「今後、日中人権対話の場を設けたい」という画期的な提案までしている。問題をさまざま抱える現政権ではあるが、この点は高く評価されてしかるべきだ。民主党批判で熱くなっている人たちは、日本政府関係者や後日北京を訪れた鳩山元総理が、「チベット、ウイグルの問題は中国の内政問題」と発言したことに批判の声を高くしているが、これは何も現政権が始めた方針ではなく、自民時代から続く日本政府の見解であり、何より国際的に認められた「事実」でもある。
むしろ北京五輪が開催された2008年に、チベットで多くの人が命を落とした弾圧があったとき、当時の自民党福田政権が、この「内政問題」発言を繰り返し、「相手(中国)の嫌がることには触れない」という態度で押し通した。とかく日本国民は忘れやすい、ということなのだろうか?
真価が問われる日本の対応
以前にも本コラムで述べたが、野田総理はこの2008年当時、野党議員として国会で、「チベットやウイグルの人権問題について、中国側に懸念を伝えていくべきではないか」という至極真っ当な質問をしている。今日の野田総理の諸対応は一貫した野田氏の「人権への意識」を反映させたものだろうが、いま、その真価がさらに問われている。
冒頭で触れたとおり、中国当局によるウイグル人への弾圧、とくに宗教弾圧は年端のいかない子供にも容赦なく行なわれていると見ていい。筆者の電話取材に対し、WUC副総裁のウメル・カナット氏(在ワシントン)は、「事件の起きたホータンは、今となっては主要都市のなかで唯一のウイグル人口比率の高い街です。それゆえ、弾圧の重点にされている」と危機感をあらわにした。
この状況に対し、野田政権、日本の政治家は何らかの発信をするのか? 中国大使から自身へ届けられた書状の無礼に憤るだけではなく、こうした現地ウイグル人の苦しみに対してこそ声を挙げてほしい。一日本国民として心からそう祈るばかりだ。いま、海の向こうで祖国の子供たちが見舞われた惨事に胸を痛めているであろう「ウイグルの母」も、同じ期待をもって日本を見つめているに違いない。
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