国際社会は、とつい書きたくなるのだが、その一員である私たちは、ウイグルやチベットの現状に対し冷淡すぎはしないか? 先週、本コラムでお伝えしたが、世界ウイグル会議(以下:WUC)のラビア・カーディル総裁は、2009年7月5日の「ウルムチ事件」以後、中国当局によるウイグル人への弾圧は激しさを増し、いっそう暴力的になったと述べている。その言葉を現実のものとしたかのような事件が、ホータンで起きた。
「違法な宗教学校」に踏み込んだ警察
インタビュー後半の内容をお伝えする前に、直近の事件の概略のみ触れておく。6月6日、ホータン市で、当局が“違法な宗教学校”と呼ぶイスラム学校に警察が踏み込み、催涙ガス爆弾等の火器を用いたため、ウイグル人の子供12人が負傷、女性11人を含む54人が拘束された。例によって、中国メディアと、欧米メディアおよびWUCの伝える内容には隔たりがある。
ウイグル地域では今もこうした事件が絶えない。そしてチベットではすでに数十人がガソリンをかぶり、自身に火を付けて「抗議」をした。その凄絶な抗議を、中国政府に向けられたもの、とのみ考えるのはもはや間違いだ。抗議は、「同じ地球に住む仲間」である私たちにも向けられている。「なぜ、黙殺しているのか?」と。
「捕まえろ! 殴れ! 殺せ!」というスローガンの下に
(撮影:WEDGE Infinity編集部)
「ウイグル人を『捕まえろ! 殴れ!(それでもダメなら)殺せ!』というのが、当局の厳打キャンペーンのスローガンといわれています。若い男女の中国内への強制移住などの政策も大規模に行なわれており、いまやウイグル人は民族絶滅の危機にまで追い込まれている。一方で、故郷でごくふつうに暮らしている者もいつ何時、命を奪われるかわからない。事態は切迫していて時間がないのです。まず、そのことを皆さんにわかってほしい」
ラビア総裁は身を乗り出さんばかりに訴えた。暴力的な弾圧は、子供であろうが、女性であろうが、容赦ないのだという。インタビューより後日ではあったが、5月下旬にはコルラで、当局に拘束された12歳の子供が、拷問死と思われる変わり果てた姿で遺族のもとへ還された。子供の脇腹には穴が空いていて内臓が飛び出ていたとも伝えられた。
「21世紀の現代にこんなことが許されていいのでしょうか? 明らかに人道上の罪を行なっている首謀者がなぜ、国際的に裁かれないのか? 私は彼らが国際的に裁かれる日まで闘いを止めません。私たちには時間がないといいましたが、反面、民族の存亡を賭けた闘いは世代を超えてやり抜かなければならないとも思っています」
「ラビア総裁勇退説」も流れていた
非暴力の世代を超えた闘いのために、今般、東京で開催された代表者大会では今後4年間の指導部体制、人事が固められた。指導部の全役職は代表者による選挙によって決められ、その模様はインターネット上に映像で公開されている。総裁候補はラビア・カーディル氏一人であったが、99票という最高得票数で信任された。しかし、この決定の前に「ラビア総裁勇退説」が流れ、内部からもそのような考えが示された経緯もある。この件を聞くと、苦笑交じりで次のような答えが返って来た。