脂がのっていない時期も漁獲し、流通させる日本
同じ日本のサバでも時期の違いで、脂のりの違いは一目瞭然
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「ジューシー きっとそれはノルウェーサバです」、「パサパサ それは国産サバかも知れません」前者はノルウェー水産審議会の宣伝文句です。脂肪分は大方25~30%と、どれを食べてもまさにジューシーで脂がのっていて美味しいサバです。後者は、筆者が日本のサバを表現したものです。旬の秋には脂がのっており十分に美味しいのですが、日本の場合、問題は脂がのっていない時期にも漁獲して、流通させてしまうことです(図1)。
スーパーの売り場に並んで入れば誰かが買っていきます。「脂がのっていない時期なので、美味しくないかも知れません」といって販売する店はありません。味噌煮、塩焼き、特売用等のコメント付きで鮮魚売り場に並んで行きます。3枚におろされている身を見ると、脂がのっていない赤系の色が見えることがよくあります。消費者は、美味しくない魚が販売されているなんて思ってもみないでしょうから、実際に家で食べてみて「美味しくなかったので次は買わない」という行動に出てしまうことでしょう。こうして「売れないサバ」が出来上がっていきます。
一方で、ノルウェー鯖は、脂が乗った時期のものが、買付け業者により輸入されてきますので「売れるサバ」が出来上がって行きます。旬ではない魚はよく売れませんので、輸入の際に一旦、買付業者によるフィルターがかかります。そして、いつの間にかタイガーストライプの縞模様のサバ(ノルウェー産)は、いつでも美味しいというイメージが消費者に定着し、価格がやや高くてもよく売れるようになっています。
国産とノルウェー産の価値が逆転
1990年に本格的にノルウェーからサバの輸入が開始された時は、国産サバの方が高価でした。しかし、品質管理とマーケティング力の差で、ノルウェーと国産サバの価値は入れ替わりました。ノルウェーサバの価格が高くなってきたために、同じしま模様であっても価格が安いノルウェー以外の原産国のサバを輸入しても、結局売れずに撃沈、損失処理を強いられるパターンになります。これはノルウェー産のサバの脂肪分が25~30%に対して、20%前後のサバを輸入して起こる現象です。
日本では(図1)のように5%~10%前後のサバも平然と販売されているのです。実に無謀な水揚げと販売であり、消費者離れが起きるのも無理はありません。漁業者は、自分で自分の首を絞めているのです。本来であれば「美味しくない時期のサバは漁獲しない」というフィルターがあった方がよいのです。サバの味は、脂肪分だけでは判断するとは難しく、たとえ25~30%の脂肪分であっても、8月に漁獲されるノルウェーのサバは皮と身の間に皮下脂肪として脂の層があり、まだ身の部分はややパサパサしています。それが9月に入ると身に脂がのり、霜降り状態の身が出来上がって最も美味しい時期になります。日本人の味覚は非常に敏感であり、この違いがわかる消費者が多くいます。脂がのっていない時期でもサバを獲って販売してしまうシステムが、消費の減退と魚価安の原因になっており、水産業の衰退の理由の一つになっているのです。