飼料用向けの比率が高い日本のサバ
上記の日本のサバ水揚げの内訳は、餌料用30%、食用が70%(生鮮出荷19%、冷凍向け46%、その他5%)となっています。一方、ノルウェーは100%(99.8%)が食用です。日本のサバは、価格が安い餌料用向けの比率が高いことで、肝心の水揚げ金額を押し下げているのです。
漁業者は、わざわざ価格が安い餌料向けを狙って漁をしているわけではありません。しかしながら、早い者勝ちのオリンピック方式は、必然的に餌料向けの比率が高くなってしまうのです。マサバより価値が低いゴマサバであってもサイズが大きければ、それなりに価格はとれるのですが、小型の場合は、マサバもゴマサバも関係なく安価な餌料用となってしまいます。新聞記事はその典型例です。小型で価値がなくても、旬ではないため脂がのっていなくても、自分が獲らなくても他人が獲ってしまうと考えざるを得ません。
「巨大な国内鮮魚市場」という日本の強み
また、せっかく鮮度がよくてサイズが大きくても、大漁水揚げで冷凍処理が追いつかず、漁獲して数日たったものは鮮度が低下するために餌料向けにせざるを得ないことも問題です。ノルウェーは、実質的に国内の鮮魚市場を持っていないので、水揚げ後、ほぼ全量を冷凍して輸出します。
一方で、日本にはノルウェーにない、巨大な国内鮮魚市場を持っているという強みがあります。科学的な根拠をもとに漁獲できる数量を、漁業者や漁船ごとに決めてそれを厳格に守る個別割り当て方式を適用すれば、漁業者は、自然と高い魚価を求めて水揚げを分散する戦略をとるようになるのです。そうなれば、大漁で処理が追いつかないというケースはなくなります。
そして価格が高い鮮魚市場と食用向け冷凍比率を増やして、旬の美味しい時期に水揚げが限られていくことで品質を向上させれば、消費者の魚離れを食い止めることもできるようになるのです。資源が回復し、美味しいものを供給することで消費者が魚を買うようになり、結果的に安い餌用向けが減少して、平均魚価は上昇していきます。日本の漁業が抱えている「獲れない、売れない、安い」という問題を克服し、「獲れて、良く売れ、価格が高い」という状態に改革できるのです。
持続可能な漁業を
餌用の魚を確保することは重要です。しかし、餌料用にしかならないような小型のサバを漁獲し続けても、水揚げ金額が大幅に上昇するようなことはありません。逆に産卵ができないような未成熟魚の漁獲は、水揚げ数量の減少を引き起こし、最後には獲れなくなって自滅していくケースになってしまうのです。
小型のサバが、一気に2~3年分成長が進み、突然大きくなって戻ってくることはありません。本来であれば、小型サバ(ビリサバ)は漁獲せずに大きくなるのを待つべきなのです。待つことで、水揚げ金額が減少する分を政府が一時的に補填し、水揚げが回復したら徐々に返してもらえばよいのです。もちろん返す前提は、資源の回復で水揚げと単価が上昇して利益が十分に出るという前提です。水揚げが回復しないのに、返金では理にかないません。