社会問題化する空き家だが、そのうち最も多いのは賃貸・売買向けの空き物件。
高齢化や人口減少によって、空き物件が増加していくことは確実だ。
それにもかかわらず、日本の中古住宅市場は盛り上がらない状態が続いている。
「日本人は新築志向が強い」「不景気だから」と風土に原因を求める声が根強いが、
利益相反の可能性がある「両手取引」や、物件情報の不足など不透明な慣行が多く残る。
そんな旧態依然の不動産流通に革命を起こそうとしている人々の動きを追った。
(*WEDGE7月号特集より第1部を転載)
増える中古に付加価値を
「東京R不動産」「もぐら不動産」
東京都町田市、神奈川県川崎市、横浜市、大和市に広がる「東急多摩田園都市」。東急電鉄が鉄道建設と同時に宅地開発をはじめて50年近くが経過し、沿線住民の高齢化が進んでいる。山や丘を切り開いて開発した宅地には、坂道が多く、歳をとれば移動に不便を感じるようになる。都心の病院へ行くため、自宅から徒歩でバス停に、バスで最寄り駅へ、そこから電車となると時間もかかる……。
田園都市に限らず、戦後開発された日本の多くの住宅地は同じような問題を抱えている。住むのに不便を感じるようになった高齢者が郊外から都心のマンションに移り住んだり、高齢者施設に入ったりすることで、空き家が増える。
そうすると、町から活気が失われ、路線価値が損なわれる。危機感を抱いた東急は横浜市と共に「次世代郊外まちづくり」の推進に関する協定を締結した。高齢者が移動しやすい路線バス運行ルートを考えたり、高齢者が引っ越していなくなったエリアに子育て世代を呼び込んだりするというものだ。すでに空き家となった物件に関しては、地域住民の拠点に転用できるよう、都市計画の変更も検討している。
20年で倍増した空き家757万戸
日本には、5759万戸(2008年)の住宅があり、そのうち13.1%にあたる757万戸(同)が空き家だとされている。この20年で倍増した。国土交通省が11年3月に行ったアンケートによれば、全国の地方自治体で空き家の実態を把握しているのは16.5%にすぎず、実際の空き家はもっと多いとみられる。