2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年6月28日

 特に、4)については、従来の「ロシア第一」の見方から「アジア第一」のそれに切り替え、それにふさわしい核抑止力を判断すべきだ、と言っています。

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 実は、この報告書は「前傾戦略」という新概念を打ち出しています。これは、(1)日本など北東アジアに米軍のプレゼンスが集中、(2)大型の固定基地が存在し、それは中国からの攻撃に対して抗堪性が低い、(3)中国が海、宇宙、サイバー空間でも軍事能力を強化してことに必ずしも対処しきれていない、という従来の状況を踏まえて、基地よりは寄港地を、常設航空基地よりはアドホックな民間施設の利用を、それも北東アジアに限らずインド洋方面まで広げようとしていることを表していると考えることができるでしょう。また費用面で言えば、これは固定費の流動化を思わせ、財政制約下の刻印を帯びたものでもあるでしょう。

 米軍がアジアからインド洋にかけググっと前のめりになり、そこに日本、韓国、豪州、シンガポール、インド、インドネシア、ベトナムが力を貸すという図式であり、これまでの「ハブ&スポーク」状況から一変した様が窺えます。

 また、どの角度から論じようとしても、日本抜きでは成立しないことがよく表れています。特に、日本の海自の対潜能力と掃海能力は、「虎の子」扱いされています。日本への期待は高く、日本に戦略的株価があったならばと、今やそれは新たな高値圏に入ったと言えるでしょう。野田政権全体に必要な認識と思われます。

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