2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年6月28日

 米AEIのウェブサイト6月6日付で、D. BlumenthalらAEIの専門家たちが米軍のアジア戦略に関する報告書を発表、中国の台頭、中国軍事力の近代化、米国の予算縮減という困難を突破して、アジア太平洋地域から利益を得続けるために、米国が軍事的に必要とする策を論じています。

 すなわち、アジアにおける歴史的利益を守りたいなら、米国はより一層努力し、軍事的資源を動員しなければならない。米軍の構造・配置の調整に失敗すれば、米国の関与意欲と実力は大きく乖離することになろう。

 では何をすべきか。政府はアジア関与のコストのみならず、その利益も説明し、米国のプレゼンス拡大に必要な予算を求めていくという政治意思を持つことが重要だ。政治意思は、同盟国やパートナー国との協働による望ましい米軍の配置を実現するためにも必要だ。

 また、今後必要となるのは、紛争時に、台湾周辺の封鎖を突破する力、台湾海峡や東シナ海における機雷除去能力、広域的に対潜作戦や機雷敷設を行う力、中国側の指揮統制・通信情報能力を無力化し、レーダーや偵察衛星を破壊する能力などだ。ところが、米軍はこれら全てを備えているわけではない。先ず、掃海艇はほとんどなく、空中からの対潜作戦は日本に大きく依存している。さらに、ステルス・非ステルス両方の飛行機も、数が足りない上に、抗堪性を向上させる必要がある。

 同盟・友邦国である日本、韓国、豪州、台湾、フィリピンについてそれぞれとらねばならない策があるが、特に日本に対しては、1)飛行場など重要施設の抗堪性の向上、2)有事に共同で使える新たな飛行場や港湾施設の確保、3)海上自衛隊の対潜能力の維持するための、潜水艦勢力増強や対潜航空機の更新、4)南西諸島方面への対艦巡航ミサイルの配備、5)豪州、インドとの協力の強化や韓国との軍同士の関係の改善を求める必要がある。日本が武器輸出規制を緩め、英国との共同開発に乗り出したのは、他国との関係強化につながる適切な動きだ。

 また、これら同盟・友邦国間との協力の重点は、1)西太平洋における情報・監視・偵察のネットワークの構築、2)同盟国間の潜水戦能力の強化、3)米軍が使用可能な基地の増加、4)核抑止力を強化の4分野に置かれるべきだ。


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