世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年7月20日

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 6月28日に行われたフランス地方選の第2回目投票(決選投票)では、不人気なマクロン大統領の与党「共和国前進」は大敗、とりわけ同党の基盤である大都市では1つも勝利を得ることができず、その多くでは緑の党が勝利を収めた。パリ市長選で、1年前の世論調査では勝利が予想されていたにもかかわらず「共和国前進」は共和党に次ぐ3位にとどまり、社会党のイダルゴ市長が49%の得票率で再選されたのは象徴的である。

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 この選挙結果について、7月4日付けのエコノミスト誌の記事は、マクロンは2つのジレンマを抱えることになった、と指摘する。1つは、自らの選挙基盤において勢力を急速に拡大した緑の党にどう対応するかである。2つ目は、人気のある、したがって脅威となり得る、中道右派出身のフィリップ首相をどうするかである。

 エコノミストの記事が提示した第2のジレンマについては既に答えが出た。マクロンにとり共和党の有力大統領候補になり得るフィリップ首相を留任させるオプションはなかった。フランスでは、大統領は首相を盾にしてきており、生き延びるため使い捨てにしてきたという伝統がある。7月3日、フィリップ内閣は総辞職し、マクロンは、後任の首相にコロナ対策を担当していた高級官僚のカステックスを任命した。カステックスは、フランス国立行政学院(ENA)出身のエリートで右派の共和党に属し、サルコジ時代の大統領府要職を勤めたが、政治家経験はピレネー地方の地方議員や人口6000人の町長程度で、閣僚経験もなく政治的には無名に近い。マクロンにとっては、2年後の大統領選挙で目指し巻き返しを図るうえで使いやすい人材なのだろう。7月6日に発表された閣僚名簿では、経済相、外相、国防相等主要閣僚は留任し、特に外部からの目を引く登用はなかった。

 今回の地方選の結果は、大都市での緑の党の勝利(パリ、マルセイユ等での社会党との連携)とマクロンの「共和国前進」の大幅な退潮に特徴づけられるが、共和党もトゥールーズや中規模都市で勝利を得ていた。そして、実は、大都市で勝利をおさめることができずに伸び悩んだルペンの国民連合が、第2の隠れた敗者ともいえる。

 その意味で注目されるのは、緑の党の今後の役割であろう。ポピュリスト政党の勢力拡大が注目された昨年の欧州議会選挙でも、各国の緑の党も躍進している。フランスでも、ルペンの国民連合、マクロンの共和国前進に次いで、3位につけた。緑の党は、環境政策以外の点では穏健なリベラル左派と言えようが、EU統合支持派であり、その意味で極右ポピュリスト政党に対する対抗軸を形成する。ただし、当面は環境政策がメインの緑の党だけでは政権をとることには困難があり、カリスマ的指導者がいるわけでもない。マクロンも既成政党も今後いかにして緑の党の支持層を取り込むか、緑の党と連携できるかが課題となるであろう。緑の党が欧州レベルの広がりを持つことにも留意すべきである。既存政党が緑の党と連携する傾向はドイツなどにもみられる。これが欧州ポピュリズムを抑制する新たな政治モデルとして確立していくのかが注目されるのではなかろうか。

  
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