2024年7月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年7月12日

 私(ジアラ)は、米の海洋法条約加入が、戦術的に、中国との交渉上の立場を強めたり、中国人の考え方を変えたりすることになると、考えたこともない。海洋法条約の問題は、米中間にある基本的な対立点の一つだが、我々は自分が選択する時と場所でこの対立に取り組むべきだ、と論じています。

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 米国では、国連海洋法条約を批准するか否か、ずっと論争の対象になってきましたが、これまでは、批准支持派が上院での3分の2を確保できず、敗退してきました。今回の批准にむけての動きがどうなるかも、未だ予断を許しません。

 排他的経済水域は、既に国際社会の中で法的規範意識を伴って受け入れられており、慣習法として成立しているといえます。EEZ制度が多くの紛争の元になってきたことはジアラが指摘するとおりですが、だからといって、これがいまなお制度として成立していないような姿勢をとれるということにはなりません。

 ただ、ジアラが海洋法条約に入っても対中関係上の効果はないとの指摘はそのとおりでしょう。米国が入ったから中国が今の主張を変える、とは予想されません。FT社説は、中国が米国を海洋法条約にも入らないで2重基準的議論をしていると攻撃するのを止めさせられる、といいますが、南シナ海問題に米の海洋法条約批准が持つ影響はほとんど無いと思われます。米中間の直接的な対立点は、EEZ内で軍事調査が自由に行いうるのかどうかということですが、米国が海洋法条約に入ったからといって、この問題は解消されません。

 米国は、海洋法条約の作成に大きな役割を果たしました。深海底資源の開発レジームは海洋法条約成立後、米国が加入しやすいように改正までしました。そういう主導的役割を果たしておきながら、その条約に入らないというような姿勢は米にとってもよくないのではないかと思われます。対中で何か大きなメリットがあるからではなく、米のあるべき姿ということから、批准するのがよいと考えられます。

 米中間の対立点については、海洋法条約で必ずしも明確に規定されていないから問題が生じているのであり、双方共に海洋法条約の当事国になって解釈論や立法論を戦わす方がよいでしょう。

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