海野素央の Love Trumps Hate

2020年8月24日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「党大会から読み解く民主党の意図と戦略」です。4日間にわたる民主党全国党大会が閉幕しました。  

 これまでに筆者は東部ペンシルべニア州フィラデルフィアや中西部ミシガン州デトロイトでジョー・バイデン前副大統領の演説を聞いてきました。皮肉なことに、生の演説よりもオンラインでの大統領候補指名受諾演説の方が、バイデン氏の情熱と熱意を強く感じ取ることができました。おそらく47年間の政治人生の中で、最高の演説だったのでしょう。

 また、民主党全国党大会では同党の意図や、大統領選挙終盤における戦略が随所に現れていました。そこで、本稿では党大会における民主党の意図及び戦略を読み解きます。

(REUTERS/AFLO)

「アメリカ対トランプ」

 中西部オハイオ州前知事のジョン・ケーシック氏並びにコーリン・パウエル元国務長官など共和党関係者が民主党全国党大会で演説を行いました。その意図は一体、どこにあったのでしょうか。

 民主党は同党を支持する女性、黒人、ヒスパニック系などに共和党員を含めた「オールアメリカ」でドナルド・トランプ大統領と戦うということです。「トランプ対バイデン」の一騎打ちではなく、「アメリカ対トランプ」という認識を有権者に植え付けるために、新しい対立構図を作る思惑が透けてみえました。

 民主党は「コロナで17万人以上の死者が出ている。失業率が10%を超えている。人種差別の抗議デモが起きている。このアメリカでいいのか?」といった強いメッセージを発信しました。選挙戦終盤で有権者に対して、「トランプかバイデンか」ではなく、「アメリカかトランプか」の選択を迫るでしょう。

 さらに、民主党が共和党関係者を党大会に招待したのは、同党の支持者を取り込む思惑があったからです。トランプ大統領の誠実さに大きな疑問を持ち、コロナ対応に強い不満がある共和党保守本流の票を得ようという狙いです。即ち、共和党員でバイデン氏に投票を考えている「隠れバイデン」票の獲得です。

 一方、トランプ大統領は「隠れバイデン」票の民主党への流出を抑えようと、必死になって「ハリスはバーニー・サンダーズよりも左派だ」「ハリスは上院で最も左派の議員だ」と、ハリス氏を標的にしてレッテルを貼っています。共和党保守本流は左派に対して嫌悪感を抱いているからです。

オバマの「演説の順番」

 バラク・オバマ前大統領が最終日の4日目に、オバマ政権の8年間を振り返り、バイデン前副大統領との信頼関係を全面に出して、同副大統領を紹介すると筆者は思い込んでいました。ところが、オバマ前大統領は3日目にハリス氏の前に演説を行ったのです。米ABCニュースのキャスターによれば、オバマ氏自ら党大会の4日目ではなく、3日目を選択しました。そこにはある意図が存在します。

 オバマ前大統領は民主党の次世代のリーダーであるハリス氏に脚光を浴びせたかったのでしょう。民主党大統領候補指名争いで、オバマ氏は次世代のリーダーを育成するために、べト・オルーク元下院議員(南部テキサス州)など若手候補を応援していたと言われています。オルーク氏はオバマ氏がワシントンで民主党大統領候補指名争いに出馬すべきかアドバイスをしてくれたと明かしました。

 つまり、オバマ氏の次世代リーダー育成に対する思いが、3日目の演説になったのです。

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