ブルームバーグの役割
バイデン氏の指名受諾演説の直前に演説を行ったのが、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長でした。なぜ、ブルームバーグ氏は注目を集めるスポットを得ることができたのでしょうか。
ブルームバーグ氏は民主党大統領候補指名争いに途中から参戦し、支持率を伸ばせず撤退に追い込まれました。その際、トランプ大統領を破るために民主党に政治献金を行うと明言しました。
バイデン氏にとって、大富豪ブルームバーグ氏の資金力は魅力的であることは間違いありません。となると、ブルームバーグ氏から選挙資金面での協力を得ようと、このスポットを与えたのかもしれません。
加えて、ブルームバーグ氏は討論力及びスピーチ能力に劣っています。率直に言ってしまえば、バイデン氏の演説を際立たせるには、ブルームバーグ氏が適任だったのでしょう。
「臭いものに蓋をする」
民主党は党大会で政策よりも結束を最優先させました。これには同党の思惑が存在します。
バイデン陣営は民主党の公約である政策綱領を作成する前に、左派の代表であるバーニー・サンダース上院議員(東部バーモント州)の陣営と共同チームを作り、政策のすり合わせを行いました。
4年前の民主党全国党大会では、中道派と左派は国民皆保険などの政策を巡り、空中分解しました。共同チームを設置してから政策綱領を作成するというステップを踏まなかったからです。
民主党は中道派と左派の分断要因となる政策面での相違を隠して、党の結束を前面に出したのです。つまり、「臭いものに蓋をした」訳です。
従って、仮にバイデン政権が誕生した場合、民主党の中道派と左派が政策に関して衝突が再燃する可能性があります。
ヒラリーの警鐘
16年米大統領選挙でトランプ氏と戦ったヒラリー・クリントン元国務長官の演説に含まれた警鐘は決して看過できません。
クリントン元国務長官は「ジョーとカマラが(トランプ氏に対して得票数で)300万票勝っても負けることを忘れないでください」と、警鐘を鳴らしました。
4年前の大統領選挙でクリントン元国務長官はトランプ氏に得票数で約300万票も多く獲得しましたが、選挙人の数で敗れました。クリントン氏は民主党は圧勝する必要があると言うのです。バイデン氏が僅差で勝利した場合、トランプ大統領が法廷闘争に持ち込む可能性を懸念しているのです。
トランプ陣営はミシガン州においてテレビ広告費を減らしました。同州での勝利は困難だと判断したフシがあります。となると、バイデン氏には東部ペンシルべニア州を含めた他の激戦5州での勝利が求められます。