海野素央の Love Trumps Hate

2020年8月4日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「米民主党副大統領候補はハリス氏か?」です。民主党大統領候補を確実にしたジョー・バイデン前副大統領(77)は8月の第1週に副大統領候補を発表すると述べましたが、米メディアによると第2週に延期になりました。

 バイデン候補は最終的に誰を副大統領候補にするのでしょうか。また、副大統領候補発表の延期の背景には、一体何があったのでしょうか。本稿ではバイデン氏の副大統領候補と発表のタイミングについて分析します。

「バイデンメモ」

バイデンメモ(AP/AFLO)

 バイデン前副大統領は7月29日、地元デラウェア州で人種間の経済格差について演説を行いました。そのとき、あるカメラマンがバイデン氏が握っていた紙のメモを撮影したのです。

 メモの冒頭にはカマラ・ハリスと明記してありました。その下に「恨みはない」「私とジルと一緒に選挙運動を行う」「才能がある」「選挙の大きな助けとなる」「非常に尊敬されている」と、議論する要点のリストが書かれてありました。

 「恨みはない」とはどういう意味なのでしょうか。

 昨年6月に開催された1回目の民主党大統領候補指名争いのテレビ討論会で、ハリス上院議員(55)はバイデン前副大統領が上院議員のとき、学区を超えたスクールバスによる人種の融合政策に反対したと、奇襲攻撃を仕掛けました。ハリス議員の攻撃に対して、バイデン前副大統領は効果的に反撃ができませんでした。

 その結果、ハリス氏は1回目のテレビ討論会で本命のバイデン氏を倒して、支持率を伸ばし注目を浴びました。

 この件に関してバイデン前副大統領は、ハリス上院議員に「恨みがあるのではないか」という憶測が飛び交いました。バイデン氏はこの憶測を打ち消したいのでしょう。

 次に、「私とジルと一緒に選挙運動を行う」です。ジルはオバマ政権のセカンド・レディであったバイデン氏の妻です。主語はハリス上院議員で、「今後、ハリス氏は私とジルと一緒に11月3日の投票日を目指して、選挙戦を共に戦う」という意味です。副大統領候補はハリス議員であることを示唆する一文です。

 加えて、ハリス上院議員は才能があり、バイデン陣営に大きな助けとなり、しかも非常に尊敬されていると記してあります。バイデン氏がハリス議員をかなり高く評価していることが分かります。

 このメモ用紙はバイデン氏個人のものです。というのは、用紙の上部に「Joseph R. Biden, Jr.(ジョセフ・R・バイデン, ジュニア)」と印刷してあるからです。しかもメモはタイプしたものではなく、バイデン氏の直筆です。そこがポイントです。いわゆる「機密情報」だった訳で、信頼度は極めて高いといえます。

各候補の「懸念材料」

 バイデン氏は副大統領候補のリストに4人の黒人女性が含まれていると、米メディアに明かしました。ハリス上院議員、バル・デミングス下院議員(63)、カレン・バス下院議員(66)、スーザン・ライス元大統領補佐官(55)の4人とみられています。米NBCニュースは最終選考に、ハリス上院議員、バス下院議員及びライス元大統領補佐官の3人が残っていると報じました。

 まずハリス上院議員は前述したように、最有力候補です。ただ、西部カリフォルニア州出身のハリス氏が、バイデン氏が狙っているトランプ大統領の支持基盤である中西部の白人の労働者を奪い取る公算は低いといえます。

 次にデミングス下院議員です。デミングス議員は南部フロリダ州オーランドの警察署長でした。今回の「黒人の命だって重要だ(Black Lives Matter)」の活動家は反警察です。

 しかも、トランプ大統領は西部オレゴン州ポートランド及びワシントン州シアトルで起きている人種差別に対する抗議デモに米連邦政府の警察部隊を派遣して鎮圧を図っています。

 バイデン候補はデミングス氏を副大統領候補に選択すると、反警察の活動家から反発を買うかもしれません。バイデン氏はこの点を懸念して、デミングス氏をはずしたのでしょう。

 一方、バス下院議員は黒人議員連盟会長を務めています。他の3人の黒人女性候補と比較すると知名度で劣り、年齢が最も高い点が短所です。

 加えて、バス下院議員は「親キューバ」です。激戦州フロリダには多くの反カストロの有権者が住んでいます。バイデン氏がバス議員を副大統領候補に選択すれば、トランプ大統領は同議員とフィデル・カストロ氏を結びつけて攻撃を仕掛けてくるでしょう。フロリダ州の奪還を狙っているバイデン氏には懸念材料になります。

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