2024年4月28日(日)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年7月23日

 今回のテーマは、「TV広告費から分かるトランプとバイデンの『本当の最重点州』」です。言うまでもなく、米大統領選挙の勝敗を左右するのは激戦州です。

(bee32/gettyimages)

 では、2020年米大統領選挙において東部ペンシルべニア州、中西部ミシガン州、ウイスコンシン州、南部ノースカロライナ州、フロリダ州及び西部アリゾナ州の6州の激戦州の中で、トランプ陣営とバイデン陣営が最も力を入れている州は、一体どの州でしょうか。「オハイオを制する者は大統領選挙を制する」と言われますが、今回の大統領選挙で同州はどのような位置づけになっているのでしょうか。また、米国民はどういったTV広告を望んでいるのでしょうか。

 本稿では、与党共和党及び野党民主党が投入したTV広告費を比較しながら、トランプ・バイデン両陣営の最重点州を探ります。そのうえで、なぜトランプ陣営の広告は効果を上げることができないのかについて述べます。

トランプの「本当の最重点州」

 共和党と民主党が20年1月から7月中旬までの間に注いだ激戦州におけるTV広告費を比較してみます。

 共和党の広告費はトランプ陣営とトランプ大統領を応援するスーパーPAC(特別政治活動委員会)の合計額です。トランプ氏の主要なスーパーPACは「アメリカ・ファースト・アクション」です。

 一方、民主党はバイデン陣営とバイデン前副大統領を支援するスーパーPACの合計額です。バイデン氏のスーパーPACには、バラク・オバマ前大統領を支えた「プライオリティ―ズUSA」及び「リンカーン・プロジェクト」などが含まれています。

 米メディアによれば、共和党が最もTV広告費を投入した州はペンシルべニア州で1300万ドル(約13億9000万円)です。16年米大統領選挙では同時期のペンシルべニア州のTV広告費は140万ドル(約1億5000万円)でしたので、9倍以上も増加しています。

 選挙人「20」のペンシルべニア州は、トランプ大統領が4年前の大統領選挙でヒラリー・クリントン元国務長官に僅か0.7ポイント差で勝利した州です。

 筆者は昨年5月20日、トランプ大統領がペンシルべニア州モントゥアズビレで開催した支持者を集めた集会に参加しました。その集会でトランプ氏は彼らに向かって、「これから何回もペンシルべニア州を訪問することになるだろう」と語っていました。その時点で、トランプ氏はすでにペンシルべニア州を最重点州に置いていたのかもしれません。

 共和党が2番目に多くTV広告費を振り向けた州が、選挙人「29」のフロリダ州で1170万ドル(約12億5500万円)です。同州では前回の大統領選挙でトランプ大統領がクリントン氏に接戦の末、1.2ポイント差で勝利を収めた州です。

 そして共和党が3番目に広告費を投入した州が、選挙人「15」のノースカロライナ州で660万ドル(約7億8000万円)です。16年大統領選挙でトランプ氏はクリントン氏に3.6ポイント差で勝利しました。トランプ大統領のTV広告費のトップ3は、ペンシルべニア州、フロリダ州、ノースカロライナ州です。

バイデンはどの州を最重点州に置いているのか?

 民主党は上で挙げた6州の中で最高の1730万ドル(約18億5570万円)のTV広告費をペンシルべニア州に注いでいます。バイデン前副大統領は昨年5月18日、同州フィラデルフィアで出馬宣言を行い、選対本部を同市に置きました。

 16年米大統領選挙において民主党が同時期にペンシルべニア州に支出した広告費は180万ドル(約1億9300万円)でしたので、1550万ドル(約16億6260万円)も広告費を増やしています。ここに、同州の奪還に向けたバイデン氏の意気込みを感じとることができます。

 次に民主党はミシガン州に1240万ドル(約13億3000万円)、フロリダ州に1030万ドル(約11億480万円)をTV広告費に支払っています。バイデン氏のTV広告費のトップ3は、ペンシルべニア州、ミシガン州、フロリダ州です。

 従って、トランプ・バイデン両陣営は激戦州6州の中でペンシルべニア州に最もTV広告費を投入しており、同州を最重点州に置いているといえます。


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