「オハイオを制する者は大統領選挙を制する」は神話?
20年米大統領選挙におけるTV広告費の分析を行ったカンター/CMAG(Campaign Media Analysis Group)によれば、20年3月31日から同年6月29日の間に、共和党はペンシルべニア州、フロリダ州、ミシガン州の順に広告費を多く投入しました。これに対して、民主党はペンシルべニア州、ミシガン州、ウイスコンシン州の順位になっています。この調査においても、ペンシルべニア州がトランプ・バイデン両陣営のTV広告費で首位です。
ただ、トランプ陣営は20年6月29及び30日、フロリダ州、オハイオ州、ノースカロライナ州、ペンシルべニア州、ウイスコンシン州及びアリゾナ州におけるTV及びラジオ広告枠の予約をしました。カンター/CMAGの調査によると、選挙戦が本格化する9月の第1月曜日の「労働者の日」の翌日(今年は9月8日)から11月3日の投票日までの間に、今回予約を入れた合計額9970万ドル(約106億9400万円)の内、3200万ドル(約34億2900万円)をフロリダ州に投じます。
ということは、トランプ陣営は大統領選挙の終盤でペンシルべニア州からフロリダ州に最重点州を移す可能性があるということです。ペンシルべニア州よりもフロリダ州の方が勝利する確率が高いと計算しているのでしょう。
さて、「オハイオ州を制する者は大統領選挙を制する」と言われてきましたが、変化が起きているようです。20年3月31日から同年6月29日の間に共和党がオハイオ州に注いだTV広告費は、ペンシルべニア州、フロリダ州、ミシガンン州、ウイスコンシン州、ノースカロライナ州、アリゾナ州に次いで7位でした。オハイオ州の優先順位は、前の6州と比較すると決して高いとはいえません。
一方、バイデン陣営は6月までオハイオ州で本選に向けたTV広告を打っていません。おそらく、バイデン前副大統領は同州がなくても大統領選に勝利するために必要な選挙人「270」を獲得できる戦略を立てているのでしょう。オハイオ州よりも、同じ中西部のミシガン州及びウイスコンシン州に重点を置いていることは間違いありません。
トランプ陣営は大統領選挙の終盤で本格的にオハイオ州に資金を投入する予定です。その反面、バイデン陣営のオハイオ州に対する重要度は低下しているとみてよいでしょう。少なくとも同陣営にとって、「オハイオを制する者は大統領選挙を制する」はもはや神話と言わざるを得ません。