発表のタイミング
4年前の大統領選挙でクリントン前国務長官もトランプ大統領と同様、全国党大会の3日前に副大統領候補を発表しました。ちなみに、08年米大統領選挙でオバマ元大統領は全国党大会の2日前にバイデン氏を副大統領候補に選んだと明かしました。
では、なぜ大統領候補は全国党大会の直前に副大統領候補を発表するのでしょうか。
主として、支持者にワクワク感を与えるためです。彼らのエキサイティングの度合いを最高に高めてから発表する方法が、効果性が高いからです。さらにライバルの正副大統領候補が、自分が選択した副大統領候補に攻撃を加える時間を与えないためです。
にもかかわらず、バイデン氏は8月17日から開催する民主党全国大会の1週間以上も前に、副大統領候補を発表する予定でした。バイデン氏には民主党内の中道と左派の統一を急ぎたいという思惑があったのかもしれません。
しかし、「バイデンメモ」が公になってしまいました。そのことが、バイデン氏が発表を行うタイミングに影響を及ぼしたフシがあります。トランプ大統領とペンス副大統領がバイデン氏の副大統領候補を攻撃する時間を最小限に抑えたいという思いが強くなり、全国党大会直前に発表するという慣例に従ったといえそうです。
さらに米下院民主党ナンバー3で、黒人のジム・クライバーン議員(南部サウスカロライナ州第6選挙区選出)の発言があるかもしれません。クライバーン議員は民主党大統領候補指名争いでバイデン氏を支持し、サウスカロライナ州の黒人票をまとめて同氏に勝利をもたらしました。
そのクライバーン議員が米公共テレビ(PBS)で、副大統領よりも最高裁判事に黒人女性が指名される方が重要だと、突然言い出したのです。副大統領候補は必ずしも黒人女性でなくても良いという意味です。バイデン氏に迷いが生じたのかもしれません。
もし副大統領候補発表の延期理由が「バイデンメモ」とクライバーン議員の発言以外にあるとすれば、候補者にスキャンダルが見つかったということになります。あるいは、バイデン陣営内で副大統領候補選択でコンセンサスが取れていない可能性もあります。
いずれにしても、副大統領候補選択においてバイデン氏の個人的な思いが働くでしょう。
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