ユーラシア・グループのイアン・ブレマーが、Project Syndicateにされた論説で、ウクライナ戦争においてロシアとウクライナそれぞれが抱える目標は根本的に相容れず、かついずれの側もなお妥協するに十分な理由を見出していないので、活発化する外交活動にも関わらず早期和平の見通しは遠い、と主張している。要旨は次の通り。
ウクライナ戦争終結に向けた外交活動が活発化する一方で、停戦合意の可能性は依然として低い。ロシアとウクライナが依然として根本的に相容れない目標を抱え、どちらも妥協する十分な理由を見つけられていないからだ。トランプ大統領によるディール成立に向けた努力は、いずれの側の戦略的な計算にも変化をもたらさなかった。
トランプは、それがどのような結果をウクライナと欧州にもたらすかに関わらず、とにかく戦争を終結させることを優先課題として焦っている。可能な限り低コストで合意を成立させたい場合、最も抵抗が少ないやり方は、弱いほう(ウクライナ)に圧力をかけることだ。
ゼレンスキー大統領は、その側近が最近、汚職事件に巻き込まれ、国内で困難な立場にある。トランプとその側近たちは、これを好機と見ているが、ゼレンスキーの弱体化は譲歩を容易にするのではなく困難にする。
最近の世論調査では、ウクライナ国民の4分の1しか完全勝利まで戦いたいと思っていないが、同時に、依然として大多数のウクライナ国民がロシアではなくウクライナの条件で戦争を終結させたいと考えている。政治的に脆弱なゼレンスキーは、降伏の匂いが漂う、自国民と軍が圧倒的に反対するような合意を支持することはできないだろう。
一方、ロシアは自国が優位な立場にあることを認識しており、プーチンは戦争を終結させようとは全くしていない。なぜなら、交渉のテーブルよりも戦場でより良い結果を出せると考えているからだ。
ウクライナが到底受け入れないと知りながら、ロシアによる領土併合の法的承認、実質的な安全保障上の保証のないウクライナの中立、そしてウクライナの主権に対する実質的な制限といった、極端な要求を突きつけることで、プーチンはトランプの合意への焦りにつけ込んでいる。
