2025年12月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年12月16日

  元ニューヨーク・タイムズ紙モスクワ支局長のセルジュ・シュメマン氏が、ウクライナ戦争を実際に終結させる方法に関する米欧露の専門家7人の主張をとりまとめ、NYT紙に掲載している。概要は以下の通り。

(dvids)

 1 停戦こそが第一歩(イヴァン・クラステフ:リベラル戦略センター会長(ブルガリア))

 戦争は、どちらかが勝利するか、双方が勝利の希望を失った時点で終結する。ウクライナでは、まだどちらの局面にも達していない。2026年に現実的に期待できるのは、包括的な和平合意ではなく停戦だけだ。

 ロシアが敵対行為の終結はトランプ大統領の支持獲得につながると考え、ウクライナが停戦によって再軍備と体制強化のための時間と西側諸国の支援が得られると考えれば、26年の停戦はあり得る。一旦停戦が成立すれば、予想よりも長く続く可能性がある。

 2 真の交渉プロセス(サミュエル・シャラップ:ランド研究所ロシア・ユーラシア政策担当特別教授)

 真の交渉こそが、敵対する者が互いの意図に最低限の信頼を寄せ、平和実現の機会を見出す唯一の方法だ。ロシアの石油会社への制裁も、長距離ミサイルのウクライナへの供与も、プーチン大統領にその立場を放棄させないだろう。将来の交渉による解決の原則と枠組みを定めた簡潔な文書の締結を目指すべきだ。

 3 ウクライナに対する安全保障の保証(パブロ・クリムキン:14年6月から19年8月までウクライナ外相)

 この戦争はロシアの「安全保障」や領土主張をめぐるものではなく、ウクライナのアイデンティティと主権をめぐる闘いだ。ロシアの目的は、ウクライナはロシアの一部であると主張することで前者を否定し、ウクライナ軍とその動向に制限を課すことで後者を制限することだ。

 ロシアの目的達成を許せば、西側諸国は弱体に見えるだけでなく、自国と世界からほとんど信頼を失うだろう。

 4 制裁だけではなく武器(アンジェラ・ステント:アメリカン・エンタープライズ研究所シニアフェロー)

 プーチン大統領に戦場で勝利はないと確信させるには、ウクライナがより多くの兵器を購入できるようにする必要がある。欧州連合(EU)は、ロシアの凍結資産を用いてウクライナに1400億ユーロの兵器購入資金を融資することに対する、加盟国の懸念を払拭すべきだ。同様に、米国もウクライナによるトマホークミサイルの購入を認めるべきである。


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