2025年12月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年12月16日

 5 最大限の圧力作戦(アリーナ・ポリャコワ:ワシントンの欧州政策分析センター所長)

 戦争を終わらせるには、ロシアへの最大限の圧力キャンペーンと、欧州主導の効果的な防衛・抑止計画が必要だ。これには長距離ミサイルの供給、ロシアの石油会社への制裁、ロシア軍への供給国に対する圧力が含まれる。

 ロシアの「闇の艦隊」タンカーの拿捕、凍結資金のウクライナ支援への充当、そして自国防衛費の増額が必要だ。ロシアから停戦合意を得られるかどうかは、米国がどれだけ圧力をかけられるかにかかっている。

 6 西側諸国の拡張主義に終止符を打つ(セルゲイ・カラガノフ:モスクワ高等経済学院世界経済・国際関係学部長)

 停戦を達成することは可能だろうが、核心的な問題、すなわち西側諸国の軍事政治同盟の侵略的な拡大が解決され、ウクライナが完全に非武装化され中立になるまで、戦争は真に終結しないだろう。

 7 新たな冷戦に備えよ(スティーブン・セスタノビッチ:外交問題評議会ロシア・ユーラシア研究シニアフェロー)

 ロシア経済の悪化はプーチンが無視することのできない脆弱性である。より強力な制裁措置によって、この脆弱性を迅速に利用すべきだ。

 ウクライナの支援国はこれまで「安全保障の保証」に焦点を絞りすぎてきた。冷戦期にヨーロッパの分断境界線が何十年も維持されたのは、ソ連の衛星国が徐々に衰退していく中で、西側は同盟国間の強固な協力によって支えられていたからだ。

 今後数十年にわたりウクライナを守るためには、停戦宣言の瞬間から、これと同じような協力のネットワークの何らかの形が確立されなければならない。

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変容する「米露vs欧州・ウクライナ」の構図

 上記7人の専門家の意見は、クレムリンのプロパガンダをなぞっているだけのカラガノフ以外、いずれも和平に向けて必要な要素を取り上げており、それなりに意味はあるが、多くの政治家、研究者等により語り尽くされてきたことであり、目新しいものではない。

 11月19日に、米露間で作成したとする「28項目の和平提案」がリークされて以降、にわかに具体的な形で和平案のやりとりが活発化し出した。英独仏3カ国、EUが対案を提示し、23日にはジュネーヴにおける米ウ(+欧州)間の協議で「19項目の新和平案」を作成、さらに30日にはウクライナ側高官が訪米して調整を続け、次は米側(ウィトコフ氏、クシュナー氏)が訪露して調整が行われる。


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