2022年8月12日(金)

WEDGE REPORT

2020年9月30日

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小山 堅 (こやま・けん)

日本エネルギー経済研究所 常務理事・首席研究員

1986年早大大学院経済学研究科修士、エネルギー経済研究所入所。英国ダンディー大学博士課程修了(PhD取得)。2020年より専務理事。研究分野は国際石油・エネルギー情勢、エネルギー安全保障問題。

露特有の「地上リスク」

 ロシアのエネルギー戦略は長期的な観点で要注目である。一つは、ロシアの石油・ガス生産の将来そのものに大きな不確実性があり、その先行き展開次第で国際市場の需給バランスが大きく変わりうる、という点である。ロシアには、膨大な石油・ガスが眠る。既存の主力生産地域、西シベリアでの生産が成熟化・老朽化する中、東シベリアや北極海などのフロンティア地域の開発に期待がかかる。

 全体として資源量には問題は無いが、技術的に困難な開発を可能にする先進的な技術の導入、フロンティア地域でのインフラ整備等も含め、開発投資を現実化するための条件には大きな課題がある。特に、欧米からの経済制裁が強化される中、必要な技術導入が困難化しており、ロシアの資源開発を左右するのは「地下の資源」ではなく、「地上における様々なリスク要因」であるとも言われる。

 そのため、今後の「地上のリスク要因」の展開次第では、ロシアの生産が長期的に増大することも、逆に大きく減少することもありうる。世界の代表的な長期エネルギー見通しでは、ロシアの石油生産見通しの振れ幅が非常に大きい(下図)。現実にロシアの石油生産が長期的に増加するのか、減少するのか、で世界の需給バランスは大きく変わり、世界のエネルギー地政学も影響を受ける。

(出所)各機関資料を基に日本エネルギー経済研究所作成 写真を拡大

 また輸出先として大きく依存する欧州市場との関係をどう再構築するかも重要である。欧州では、欧州連合(EU)を中心に脱炭素化への取り組みが急速に進められており、伝統的な石油・ガス輸出国であるロシアにとって、重大な問題となりつつある。その点、ロシアでも近年になって水素への関心が非常に高まっていることも注目される。

 同時に、欧州への依存度を下げるための対アジア戦略も重視されている。欧米との関係が難しさを増す中、戦略的には中国との関係強化に向かっているのは周知の事実で、エネルギー面でも、その流れが顕著である。

 しかし、対アジア戦略としては、中国を最重視しつつも、日本や他のアジア諸国に目配りした対応戦略が重要となっている。こうした様々な課題に対して、ロシアがどう動くか。わが国も注視していく必要があろう。

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◆Wedge2020年10月号より

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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