新型コロナウイルス感染症がどんな病気なのかを理解しようにも、何を見ればいいか分からない。そんな方のために、最新の知見から「新型コロナウイルスのNow!!第2波」を作成・公開して話題となった武藤義和医師に、新型コロナの正体と必要な対策について教えてもらった。
[Q1] 1日に数百人も感染者が出ると怖いです
[Q2] どのような人が重症化しやすいのでしょうか?
[Q3] 無症状の感染者からも感染するのではないですか?
[Q4] 感染するのが怖くて人が多いところには行けません
[Q5] マスクはいつどんな時にすればいいのでしょうか?
[Q6] ワクチンや治療薬はできますか?
[Q7] マスクや本の表面にウイルスがしばらく残っていると聞きましたが?
[Q8] 新型コロナが改善した人と会うのが怖いです
[Q9] 国民全員にPCR検査をすれば無症状でも感染者が見つけられ感染者数を減らせるのでは?
[Q10] 新型コロナにかかると後遺症が残りますか?
[Q11] スーパーマーケットで「くしゃみ」をしている人がいたら感染しそうで怖いです
[Q12] 「東京」「ジム」「飲食店」「職場」など感染者が発生した場所が怖いです
[Q13] 子供たちが楽しみにしていた修学旅行などが延期や中止になっています。新型コロナが収束しない以上、こうした学校行事はできないのでしょうか?
[Q1] 1日に数百人も感染者が出ると怖いです
[A] 感染者=検査が陽性の人には、無症状の人も半数程度含まれています。また、もっと多くの患者が発症する疾患もあります。数字に一喜一憂せず、新型コロナがどういった病気なのかを知ることが大事です。新型コロナは肺炎を起こすウイルスの一つですが、特別に死亡率が高い病気ではないことや病気の経過に関しても多くのことが分かってきました。今では多くの病院で対応が標準化されてきています。一方で、人工呼吸器やECMO(心臓や肺の代替を行う装置)を使っての治療が必要な重症者が増えれば、医療現場の負担は増します。
[Q2] どのような人が重症化しやすいのでしょうか?
[A] 主に重症化するのは65歳以上の高齢者、または血圧が変動しやすい高血圧の人や糖尿病、悪性腫瘍、慢性腎不全、慢性肺疾患、心血管疾患などの基礎疾患を持つ人や、喫煙者、BMI30以上の肥満体形の人、などです。一方で、小児や若い人(50歳以下)は、ほとんどの場合は軽症か無症状です。
[Q3] 無症状の感染者からも感染するのではないですか?
[A] 新型コロナは5人の感染者がいたら、うち1人が他者への感染性があると言われます。感染させる期間はおおむね発症の2日程度前~発症後8日程度までです。ただし、まったく無症状の感染者の感染力については、まだはっきりしたデータはありません。そのため無症状でも感染対策は大事ですが、まずは何より発熱や咳がある時は決して無理はしない、人と会わないなどを確実にするだけでも感染リスクは相当低くできます。
[Q4] 感染するのが怖くて人が多いところには行けません
[A] ウイルスが入るのは目や鼻や口からです。次の三つの感染経路を遮断できる場所で活動したり、感染を防ぐ行動をとることで感染リスクを下げることができます。
①飛沫感染:くしゃみや咳、マスクなしの会話などで、およそ2m以内の距離で飛沫を浴びる。
②接触感染:ウイルスがついたところに触れて、その手でそのまま目や鼻や口を触る。
③マイクロ飛沫(エアロゾル)感染:空気の流れが悪いところでウイルスが数時間程度浮遊し、それを吸入する。
つまり、感染しないためには手洗い(アルコール消毒)を行い、人の多い場所や密閉空間ではマスクをしっかり着用し、換気をしっかりすることが重要です。
[Q5] マスクはいつどんな時にすればいいのでしょうか?
[A] およそ2m程度の距離で人と接したり話したりする場合や、換気の悪い空間内で不特定多数の人と滞在している場合などはつけたほうが良いです。一方で、外を歩いている時など、人とすれ違う程度で換気が良い場所では、マスクはつける必要はありません。
[Q6] ワクチンや治療薬はできますか?
[A] 世界中の企業がワクチン開発にしのぎを削っていますが、このウイルスはRNAウイルスというものの一種で、変異しやすいことが特徴です。そのため劇的に効果があるワクチンはまだ期待できないと思います。治療薬に関してはレムデシビル、デキサメタゾンなどが承認されており、知見が増えてくればさらに増えていくでしょう。
[Q7] マスクや本の表面にウイルスがしばらく残っていると聞きましたが?
[A] 環境の表面ではウイルスが生存できると言われます。段ボールですと24時間、プラスチックやステンレスなら2日~3日間、使用済みマスクだと7日間程度と言われます。ただ、これは実験室での結果であり、実生活ではおそらくもう少し短いと思います。いずれにせよ肝心なのは手洗いをしっかりすることです。
[Q8] 新型コロナが改善した人と会うのが怖いです
[A] 改善された方に感染性はありません。現在分かっていることは、軽症者は発症から8日もすれば人への感染性はなくなりますので、隔離解除の基準も余裕を持って10日間となっています。それ以降であれば通常の接し方で問題はありません。
[Q9] 国民全員にPCR検査をすれば無症状でも感染者が見つけられ感染者数を減らせ
るのではないですか?
[A] PCR検査の陰性が示すのは「今回採取した検体の中にはウイルスを見つけられませんでした」ということです。検査には見落としもあります。検体を取るタイミングによっては当初陰性でも再検査で陽性になる可能性もあります。そのためPCR検査陰性はその人が現在感染していないという証明になりません。加えて、無症状の時期は検出率も低く、仮に全国民にPCR検査をしても感染症対策としての効果は期待できません。
[Q10] 新型コロナにかかると後遺症が残りますか?
[A] 新型コロナの後遺症というのは「退院後の診察でも残っている症状」です。一般的に肺炎になった方は重症であればあるほど、改善後も時間をかけて治っていきます。味覚障害などが1カ月以上残る方も稀ながらいますが、8割近くの新型コロナ患者は2週間程度で改善します。何より、ほとんどのケースでは、長引く症状などはなく、自然に軽快していきます。
[Q11] スーパーマーケットで「くしゃみ」をしている人がいたら感染しそうで怖いです
[A] 換気の良い条件でマスクもきちんとしていれば、くしゃみをするだけでは感染リスクは高くありません。基本的にすれ違う程度の短時間の接触では、感染する可能性は低いとされます。心配であれば、手洗い(アルコール消毒)を行い、換気がなされているかを確認すると良いでしょう。
[Q12] 「東京」「ジム」「飲食店」「職場」など感染者が発生した場所が怖いです
[A] 感染リスクのある場所でもしっかりとした換気をしている、体調不良者がいない、距離がとれている、などの対策がしっかりできていれば、感染リスクを減らせます。何より、個人個人が感染経路に注意した行動をとれていれば感染リスクを大きく下げることができます。
[Q13] 子供たちが楽しみにしていた修学旅行などが延期や中止になっています。新型コロナが収束しない以上、こうした学校行事はできないのでしょうか?
[A] 最も重要なのは社会全体が新型コロナの存在を許容することです。感染者を非難するような空気がなくなれば学校行事も普通にできると考えます。一方で、感染症対策をしっかりと行うことが大事です。例えば、修学旅行では行く人数や場所を分割したり、日程を短くしたりして接触頻度を減らすことが大切です。また、換気の良い場所を選択し行動すること、鉄道やバスでの移動中や食事の時は静かにすることなどは集団行動における感染対策として非常に重要です。最も有効な対策は、患者が集団の中で一緒に行動しないことです。つまり熱があったり、体調が悪かったりする場合は、必ず保護者や先生に申告し、行事に参加しないことが必要です。これは大人だけで集まる行事でも気を付けたい、とても大切な感染症対策の一つです。(聞き手・編集部 櫻井 俊)