2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2020年9月24日

 2019年12月末、中国は武漢市に端を発した新型コロナウイルス感染症(COVID−19。以下、新型コロナ)は瞬く間に世界中に広がり、全世界で2506万人が感染し、84万人が亡くなったとされる(20年8月31日現在)。

 新型コロナそのものによる感染者数・死者数のインパクトの大きさもさることながら、新型コロナを制圧するために、日本も含めた世界中の人が大きな社会的・経済的制約を受けている。欧米を中心に〝New normal〟(日本では、〝新しい生活様式〟と訳される)に向けて社会変革を試みる動きがあるが、多くの国では新型コロナのコントロールと社会経済活動の再開のバランスの間で苦しんでいる。

新型コロナの
基本的な特性とは

(出所)各種資料を基にウェッジ作成 写真を拡大
 では日本は今後どのようにこの感染症と向き合っていけばいいのか。それを考えるにあたり、まずは、新型コロナの基本的な特性をおさらいしておきたい(右図参照)。

 新型コロナの特性の一つにあるのが、感染してから症状が出るまでの潜伏期間や無症状者であっても他人にうつす可能性があることである。過去に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)は、感染すると原則として何かしらの症状が出て、症状が出てから他人にうつすという特徴があった。現時点では、新型コロナにおいては症状が出る1日~2日前が最も他人にうつす可能性が高いとされている。この点が新型コロナの〝封じ込め〟(ウイルスを日常生活から完全に排除すること)を難しくしている理由であろう。

 また、新型コロナは若年者から高齢者まで幅広い年齢層で感染を引き起こすが、現在のところ重症化するのは高齢者や何らかの基礎疾患がある人(糖尿病など)に多く、若年者での重症化は極めて稀である。日本において6月5日までに入院した3403例を分析した結果をみても、重症化率は、29歳以下で2%、30歳~49歳で4%のところ、50歳~69歳で13.9%、70歳以上で13.1%となっている(8月24日付厚生労働省アドバイザリーボード資料)。

 致死率は国によって大きく異なるものの、現時点では0.25~3%程度とされている。この致死率も年代によって大きく異なることが特徴で、例えばイタリアからの報告によると若年層(0歳~49歳)ではほぼ0%程度と極めて低いものの、70代では12.8%、80代では20.2%と高い。

 これまでに流行したSARSやMERSでは致死率がそれぞれ10%前後、34.4%とされている。他方で季節性インフルエンザでは0.01~0.1%以下程度であることを考えると、SARSやMERSほど高い致死率ではないものの、高齢者や基礎疾患を有する人に対しては〝ただの風邪〟と片付けてしまうのはいささか乱暴である。

 ちなみに、巷では「インフルエンザで年間1万人が亡くなっているのに対してコロナでは1000人しか亡くなっていない、インフルエンザの方がよっぽど大変だ」と述べている人も散見される。だが、新型コロナに関しては、毎年の季節性インフルエンザの流行時期のように、個々人・飲食店などにおける感染予防や在宅勤務の奨励など産業界の協力なしに普通の生活を送っていれば、死者数はこの程度では済まないとみるべきである。


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