WEDGE REPORT

2020年9月30日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小山 堅 (こやま・けん)

日本エネルギー経済研究所 常務理事・首席研究員

1986年早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了、日本エネルギー経済研究所入所。英国ダンディー大学博士課程修了(PhD取得)。2011年より常務理事。研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。

 今年前半、国際石油市場を中心に、世界のエネルギー市場は未曽有の大荒れ相場の展開となった。年初、米国がイラン革命防衛隊のスレイマニ司令官を殺害したことで、両国の軍事衝突懸念が一気に高まり、原油は高騰した。衝突が回避され市場が落ち着きを取り戻す中、今度はコロナ禍で交通用のエネルギー需要を中心に石油需要が激減した。市場は一気に供給過剰に陥り、原油価格は急落した。

モスクワ近郊にある石油貯蔵施設 (BLOOMBERG/GETTYIMAGES)

 それに追い打ちをかけたのが、ロシアも加わるOPECプラスが、3月初に協調減産を放棄し価格戦争に打って出たことである。油価の下支えは、高コストの米国シェールオイル生産を守り、米国の国力増大につながる点でロシアの国益に適わない、との戦略判断を下したロシアが協調減産に折り合わなかったのである。原油価格は急降下し、4月には先物取引市場の特殊な取引要因の影響もあって、米WTIの先物価格が史上初の「マイナス価格」を付けた。

 こうした大幅な価格低下に対応して、まずは供給サイドで強いアクションが取られた。一時は崩壊した協調減産体制が米国トランプ大統領の「仲介」もあって復活、5月から史上最大規模の減産が実施された。協調減産のカギを握るサウジアラビアとロシアはあまりの低価格と需要蒸発に苦しみ、急遽、協調減産強化に復帰せざるを得なくなった。また、低価格で高コストの石油生産が採算割れとなり、生産が低下していく現象も一気に顕在化した。代表的な例が米シェールオイルであり、今年は前年比100万バレル/日以上の大減産となる。

 5月以降は、欧米を中心に「都市封鎖」が解除・緩和され、経済活動が再開され、石油需要も徐々に回復基調を辿った。未だ昨年の需要水準には戻っていないものの、需要が底を打って増加に転じたことは原油相場に大きな影響を与えた。原油価格は上昇に転じ、6月には40ドル台に復帰した。

 7月に入ると原油価格は動きが鈍くなり、「凪」状態に入った(下図)。需給の劇的な変化が無くなったこと、需要は回復基調にあるものの、コロナ禍の今後の展開が読めず、再び経済悪化や移動制限強化等の可能性もありうること、油価の一定の回復で米国石油生産に下げ止まりの兆候が出ていること、OPECプラスがこれらの状況に合わせて需給調整を続けると予想されていることから、値動きの乏しい、一進一退の状況になったのである。相場を大きく動かす「ドライバー」に欠ける「凪」相場のなか、次に何が起こるのかを市場が見守っている状況ともいえる。

(出所)関係資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 そんな今年の相場展開の中で、ロシアの動きもカギを握った。コロナ禍の前から石油輸出国機構(OPEC)にとっては、いかにロシアの協力を取り付けるかが、市場安定化・需給調整の鍵を握るとして重視されてきたが、図らずもロシアの役割の重要性が改めてクローズアップされたともいえる。

関連記事

新着記事

»もっと見る