From LA

2020年9月29日

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 菅政権の目玉とも言えるデジタル庁の創設。それ自体は今の日本にとって歓迎すべきことだろう。コロナは日本におけるデジタル化の遅れを広く自覚させることとなった。最初に中国で学校などが閉鎖された際、中国の子供らは「オンライン授業があるので特に影響はない」などと語っていた。もちろん都市部と郊外では大きな差があるだろうが、中国のデジタル化が世界で最も進んでいたことは間違いなく、リモートワークも問題なく行われ、さらにはコロナ下でロボットによる自動運転配送など、世界をリードする技術が次々披露された。

イメージ写真(PixelsEffect/gettyimages)

 デジタル化の遅れを実感したのは日本だけではなく、米国も同様だ。米国、特にニューヨークやカリフォルニアでは中学生以上にクロームブックやアイパッドを配布するなど、教育の場でのデジタル化は進められていた。しかし米国でもブロードバンドの普及率は80%程度、インターネットにアクセスできない子供たちの存在が問題となった。

 政府がインターネットアクセスを補助することによりリモート授業は可能となったが、今度は他民族国家ゆえの問題も浮上した。特にカリフォルニアでは英語を話せない子供が一定数存在する。対面授業ではスペイン語などを話せる補助教員をつけることでなんとか対応していたが、リモート授業になると同時通訳のできる人員が不足し、現場では混乱が起きた。

 こうした問題はあったものの、米国でもリモート授業は普及し、またリモートワークも大企業を中心に完全に市民権を得つつある。レストランの店内営業が禁止になっているところでは、スマホアプリを使った非接触型のピックアップサービスが定着している。スマホで注文、支払いを行い、店舗では商品をピックアップするだけのサービスだ。

 もちろんこうしたことは日本でも実施されてはいるが、社会への浸透度には大きな差があるように感じられる。米国では現金の支払いを拒否する店も増え、スマホやカードでの支払いがマジョリティとなっているが、日本はまだ現金払いが多い傾向がある。

 民間のアプリはそれでも健闘していると思うが、政府が作るアプリのあまりの使えなさは驚くばかりだ。日本政府はマイナンバーカードを普及させ、生活の様々な場面で使えるものにしたい、という指標を出しているが、使いこなすためのアプリがとにかく煩雑だ。例えば確定申告をマイナンバーカードを使って自宅から、というのが推奨されているが、PCで行うにはカードリーダーを用意する必要がある。スマホならばリーダーなしでも可能だが、使い方が複雑でスマホなどのデバイスにそれほど慣れていない人には使いにくい上に、白色、青色などの経費計算には対応していない。

 筆者は8月末に米国から日本に帰国したのだが、その際に空港でPCR(8月より唾液)検査を受ける必要があった。陰性の場合のみ空港から出ることが許可されるが、その際にラインアプリのダウンロードが推奨された。「厚生労働省帰国者フォローアップ窓口」という名称で、「このLINEアカウントでは、新型コロナウィルス感染症が発生している中で、皆さまに安全、安心にお過ごしいただけるよう、毎日、健康状態の確認をさせていただきます」とアナウンスされている。

 ところがこのLINEアカウントを追加したにも関わらず、ここから連絡が来ることは一度もなかった。代わりに帰国後2週間の間に計3度電話があり、体調などに変化はないか、と尋ねられたのみだった。なぜ折角作ったLINEアカウントを活用しないのか、何らかのミスなのか人員不足なのかは不明だが、疑問に感じる出来事だった。

 またマイナンバーカードそのものも使い方が不自然だと感じる。マイナンバーカードを取得するには個人の情報を提示し、本人確認を行う必要がある。そのためのIDカードのはずだ。ところが仕事先からマイナンバーの提示を求められる際、マイナンバーカードのコピーと共にパスポートなどの本人確認書類の提出が必要となる。なぜすでに本人確認を行い、個人のIDとなるカードを取得しているのに、別の本人確認の書類が求められるのか、これではマイナンバーカードを持つ意味がないように思える。

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